大鶴さんが唐さんから受け継いだ大切なスキル

――今、ご自身が唐さんから強く受け継いだと思える部分を挙げるならどんなところでしょうか。

「自分は相変わらずバカ息子だと思うんだけど、声だけはつぶれないんですよ。ナマ声でテントで何日間やっても、僕だけはつぶれないし、一番通るんです」

――ここ数年、さまざまな舞台に出ていますが。

「全然大丈夫なんです。これだけは本当にありがたくて。たまに“なんにもしてないんです”と言って、すらっと手足の長いスタイルのいいモデルの女の子とかいるでしょ。あれじゃないけど、僕も声は単純につぶれないんです。何もやってない」

――声自体、唐さんと似てますよね。

「似てるだけじゃなくてつぶれないのも同じ。母親は意外とつぶれちゃう方だったんです」

――李麗仙さんの声も、渋くてかっこよかったです。

「低い声の人は意外とダメなんですよね。声の通りと強さだけは、どこの劇団に行っても負けないです。もちろんそれだけじゃダメなんですけど、でもこれは完全にオヤジがそうだったので、ギフトだなと思います」

舞台俳優として八面六臂の活躍を見せる今、「声の通りと強さ」は何にも代えがたい強みだ。

おおつる・ぎたん
 1968年4月24日生まれ、東京都出身。父は劇作家、演出家、俳優、芥川賞作家の唐十郎。母は舞台女優でNHK大河ドラマ『黄金の日日』やドラマ『3年B組金八先生』第4シリーズでも知られた李麗仙。大学在学中の88年、主演映画『首都高速トライアル』にて本格デビューした。90年に『スプラッシュ』で第14回すばる文学賞を受賞し小説家デビュー。94年『東京亜熱帯』(福武書店)や11年『その役、あて書き』(扶桑社)、22年『女優』(集英社)などを執筆。

 95年には『となりのボブ・マーリィ』で映画監督デビュー。企画・脚本・監督として09年『前橋ビジュアル系』や11年『キリン POINT OF NO RETURN!』など多くの作品を手掛ける。

 90年代には特に映像作品で活躍。映画『湾岸ミッドナイト』シリーズの主演を務め、ドラマ『逢いたい時にあなたはいない…』や『悪魔のKISS』などで人気を集めた。2000年台以降は舞台にも活躍の場を広げ、2014年から参加の劇団「新宿梁山泊」では父・唐十郎の戯曲に挑戦している。ここ数年、さらに舞台出演が増え、昨年6作品、今年は10作品に出演予定。最新舞台は『リア王2024』。

●作品情報
舞台『リア王2024』
作:ウィリアム・シェイクスピア
訳:小田島雄志(白水社刊)
上演台本・演出:横内正
出演:横内正、一色采子、大沢逸美、浜崎香帆、大鶴義丹、松村雄基、三浦浩一
主催・企画・製作:T.Y.プロモーション
2024年8月29日(木)~9月2日(月)全6回公演 三越劇場