よこじまのハンカチをたてじまにーーでお馴染みの手品師・マギー司郎さん。ゆったりとした茨城なまりのしゃべりで振りまく愛嬌が心地よい78歳は、現在も現役真っ只中で舞台に立ち、よこじまをたてじまに変えている。もうすぐ60年目に突入する芸歴の中に、一体どんなTHE CHANGEがあるのだろうか。【第4回/全5回】

マギー司郎 撮影/有坂政晴

 撮影中、「これでいいかな?」と言いながら、にっこりと笑いトランプを投げる仕草をしてくれるのは、手品師のマギー司郎さん(78)。カメラマンが「クールな表情もできますか?」と伝えると、「どうも顔がクールじゃないからねえ」と、くしゃっとした笑顔を見せる。カメラマンが思わず「かわいいですね」と漏らす。

「それだけで生き残ってきたから(笑)」

 癒やしと愛嬌の権化と言っても過言ではないマギーさんだが、いつになく真剣な表情を見せたことがある。それは、2004年5月23日放送『課外授業 ようこそ先輩』(NHK総合)に出演したときのこと。
 母校の小学生の前で授業を行う同番組で、いつものようにおしゃべりを交えたマジックを教えつつ、子どもたちの前で「ダメな自分をみんなに言うことによって、すごく強くなれるってことがあるのね」と話す。子どもたちは「恥ずかしい」と戸惑うが、マギーさんは「ダメなところを見せても、長い人生のうちでは、全然マイナスじゃないの」と訴えかけるのだ。
 恥ずかしがっていた子どもたちだが、最終的には教壇の前で、隠したい自分の弱みを見せながらマジックをやり抜く。失敗してしまった子どもにも、マギーさんは「うまくいったよ、大丈夫」と声をかける。
 弱さと向き合う子どもたちの姿が視聴者の胸を打ち、同番組は「日本賞 教育ジャーナルの部 最優秀番組」を受賞したが、マギーさんは「あれは編集の力もあるんじゃないですか」と謙遜する。

「あれは2日間かけて、30分のテープを80本分回しているんですよ。そのときはじめて、“脳って熱を持つんだな”と思いました」