あの番組は、子どもさんたちと一体になったような感じ

ーーたいへんな撮影だったんですね。

「そうですね。自分の疲れや辛さで表情も変わるし、そうすると、大人が一生懸命乗り越えようとしている姿って、子どもさんたちもわかるんでしょうね、無意識に手伝ってくれたんですよ。だからあの番組は、子どもさんたちと一体になったような感じはするけどね」

ーー子どもたちもマギーさんの人柄に惹かれたんでしょうね。

「いやいや、僕はダメだからね。だってさ、世間には本当に感謝しているんだよ。僕は勉強しようとしていないから漢字が覚えられない。自分の住所が書けないんですよ。いまはスマホを横に置いて、それを見て書くんだけど、それって手を抜いているってことなんでしょうね」

ーー「覚えない」ことで手を抜いていると。

「そうそう。名前は書けるんだから、覚えようと思えば覚えられるんだからさ。住所はメモがないと難しいね。役所とかで書かなきゃいけないときは、事前に誰かに書いてもらったメモを見ながら書くんだけど。でも、それができるようになったら、いまのこういう芸はできなくなるんだろうなって思ってる」

 その真意は、「ダメな自分も必要だから」だと話す。まさに、母校の子どもたちに訴えかけたこと、そのものだ。

「だから、どこか自信のなさを持っていないとね。事務所の社長にもよく言っているんですけど、芸人が本当に豊かになったら、そんな芸人、僕は笑ってもらえないと思っている。すっごいお金があって、大邸宅に住んでいて安定していたら、ムリでしょ、そんな芸人見たくないですよ」

 現在78歳だが、「85歳、90歳くらいまで仕事ををしないと、ちょっと楽しめないなあという感じ」の生活水準を意識しているという。

「お金は使っちゃう。少しでも貯まると旅行に行っちゃう。貯めないようにしているんですね。貯めたいんだけどね。貯めたらたぶん人間って、傲慢になるんだと思うの。それに、安定していたら舞台に穴を開けるかもしれないよね。生活の心配がないから。だからさ、あんまり豊かにならないほうがいいような気がするんだよね」

 生きている限り、芸人としてまっとうする。そんな覚悟が、柔和な笑顔を支えているのかもしれない。

(つづく)

マギー司郎(まぎー・しろう)
1946年3月17日生まれ、茨城県出身。1968年、正統派マジシャン・マギー信沢に入門。1980年に『お笑いスター誕生!!』(日本テレビ系)で7週連続勝ち抜きしたことを機に、テレビでも活躍。翌年、放送演芸大賞ホープ賞を受賞。2004年に出演した『課外授業 ようこそ先輩』(NHK総合)が話題となり、同番組は同年に日本賞「教育ジャーナルの部・東京都知事賞」を受賞した。親しみやすい芸風と茨城なまりのしゃべりで、老若男女に愛される存在。『笑点』(日本テレビ系)2016年時点での最多出演者。

【イベント情報】
歌って元気!笑って健康!
秋の演芸フェスティバルVOL.1
●日 時:2024年9月17日(火) 開場14:00 開演15:00
●会 場:渋谷区文化総合センター大和田さくらホール(4F)
●入場料:全席自由4,800円
●問合せ:プロジェクトドーン
     E-mail:projectdawn123@gmail.com
●主 催:プロジェクトドーン
●協 力:(有)プロモーション・ススム
     (株)ジョリーアンリミティッド