よこじまのハンカチをたてじまにーーでお馴染みの手品師・マギー司郎さん。ゆったりとした茨城なまりのしゃべりで振りまく愛嬌が心地よい78歳は、現在も現役真っ只中で舞台に立ち、よこじまをたてじまに変えている。もうすぐ60年目に突入する芸歴の中に、一体どんなTHE CHANGEがあるのだろうか。【第5回/全5回】

マギー司郎 撮影/有坂政晴

「見てよこれ、気持ち悪いでしょう」

 手品師のマギー司郎さん(78)が、テーブルの中央に1枚の写真を置く。往年のジュリーのように、ツヤのあるセミロングヘアを7:3に分け、ダンディな口ひげを生やした男性が写っている。

「これ、25歳くらいのとき。かっこつけてた時期もあったんでね。この写真、ほんとうにイヤだもん。だから戒めのために持ち歩いているんです」

ーー戒めのために……!?

「そうそう。キャラクターが全然違うでしょ。作りこんじゃって、中身なんか空っぽですよ。この時代の僕はなんにもないからね。自分がダメなときに限って、作りすぎるんだと思います」

 当時、ストリップ劇場での下積み時代。1日4~6ステージ、手品目当てではないお客の前に立ち、辛酸を舐めていた時期だ。

「温泉地のストリップ劇場でやるときはね、お姉さんたちが温泉旅館の宴会場に呼ばれて、出張に行くこともあったんですよ。そうするとお姉さんが自分の出演時間になっても戻ってこないこともあって、僕がお客さんの間を繋がなきゃいけないんですね。お客さんは踊り子さんに早く出てほしいから、僕は自分が嫌われているのがわかるんですよ。50人くらいの無言の"ひっこめ”という圧が、いちばんきつかったですね。お客さんの気持ち、全部わかってますのでね」