坂東好太郎の三男で、1973年に歌舞伎座『奴道成寺』の観念坊で初舞台を踏んだ歌舞伎役者の坂東彌十郎。近年はドラマ『クロサギ』(TBS)、『VIVANT』(TBS)、『VRおじさんの初恋』(NHK)などの映像作品にも出演している彼の「THE CHANGE」に迫るーー。【第1回/全2回】

坂東彌十郎 撮影/柳敏彦

 役者としてのターニングポイントは、一昨年、NHK大河『鎌倉殿の13人』で北条時政を演じたことですね。あれからテレビの仕事も増えましたし、歌舞伎座の公演でも主役を務めさせていただく機会が増えました。ありがたいことです。

 そしてこのたび、『鎌倉殿〜』の脚本を書かれた三谷幸喜さんが監督も務めた映画『スオミの話をしよう』に出させてもらいました。

 本格的な映画出演はこれが初めて。そういう意味では新人だけど、メインの出演者の中では僕が一番年上でした(笑)。

 でも、撮影所の空気は、幼い頃に体験しているんです。というのも、僕の父の坂東好太郎は、十三代目守田勘弥の息子で、もともとは歌舞伎俳優でしたが、若い頃に映画の世界に飛び込んで、そこで活動していました。だから僕も撮影所に遊びに行ったりしていました。

 でも、僕が小学1〜2年生の頃、父は自分の従兄の坂東蓑助が八代目坂東三津五郎を襲名するタイミングで、歌舞伎の世界に戻ったんです。兄の吉弥も一緒でした。

 一般的に、歌舞伎俳優の子は子役として初舞台を踏むものですが、子役ってやっぱり、小さくてしっかりしている子じゃないと務まらないんです。でも、僕はその頃からすでに背も大きく(笑)、子役に見えないことから、役がつかないどころか、舞台に出られなかったんです。

 踊りや三味線の稽古はしていたので、踊りの会等には出させてもらっていましたが、「大人の役で出られるまで待ちなさい」と、歌舞伎の舞台に出ることはなかったんです。

 だから、僕の初舞台は1973年、17歳のとき。おじの八代目三津五郎演じる『奴道成寺』で、所化観念坊役でした。

 高校卒業後に三津五郎に入門し、部屋子になるはずでしたが、75年の1月に、なんとおじが急死してしまったんです。