自分が100感動して、やっと人様を50感動させられる

 プライベートではスイスによく行くんですが、これもそもそもは、猿翁さんにヨーロッパの山に連れて行ってもらったのがきっかけ。

「モノを見て感動しなさい。おいしい物を食べるのや、キレイな景色を見るのもそうだけど、自分が感動しないと、人様を感動させられないから。自分が100感動して、やっと人様を50感動させられるから、うんと感動しなさい」

 って。それを口実に、かみさんにも「ちょっと感動しに行ってくるから」って言って行くんですけどね(笑)。年に1回は行くようにしていたんですが、コロナ禍で3年行けなかった時期もありましたね。トレッキングが目的なので、街にはほとんど行かないです。スケジュールも決めないでウロウロするのが好きなんです。理想としては20日間は行きたいんですけど、やっぱり仕事があるので、せいぜい2週間がいいとこですね。

 歌舞伎俳優としての今後の目標ですか? 今は68歳ですが、『忠臣蔵』の大星由良之助、『義経千本桜』の平知盛、『俊寛』俊寛僧都……どれもやりたい。

 還暦のときはヨーロッパ公演をやったので、70歳の古希のタイミングでも、って思ったんですが、今から2年で準備は間に合わないでしょうね。でも、やりたいって気持ちはあります。

 実は、僕の父は70歳で他界しているんですけど、うちの一族で父が一番の長生きなんですよ。だから、まずはその父が亡くなった年を越さなきゃって思っているんです(笑)。

坂東彌十郎(ばんどう やじゅうろう)
1956年5月10日生まれ。東京都出身。坂東好太郎の三男。73年歌舞伎座『奴道成寺』の観念坊で初舞台。78年名題昇進。1981年から15年間、三代目市川猿之助(二代目猿翁)の一座に。猿之助演出の舞台で演出助手を務め、坂東玉三郎の「夕鶴」では演出も手掛けた。その後は平成中村座にも参加。近年はドラマ『クロサギ』(TBS)、『VIVANT』(TBS)、『VRおじさんの初恋』(NHK)などの映像作品にも出演している。

映画『スオミの話をしよう』
三谷ワールド全開のミステリー・コメディ!
著名な詩人・寒川(坂東彌十郎)の妻・スオミ(長澤まさみ)が行方不明になった。やがて、寒川邸にはスオミの過去を知る4人の男たち(西島秀俊松坂桃李遠藤憲一、小林隆)が次々と集まってくる。男たちはスオミについて語りだすが、彼らの思い出の中のスオミはバラバラで……。三谷幸喜が5年ぶりに監督を務めた最新作。
配給:東宝
(c)2024「スオミの話をしよう」製作委員会
9月13日(金)より全国公開。