あるときは、“鎌倉殿”を支える13人のひとり。あるときは“聖まごころ病院”看護師の父親。またあるときは、“寅ちゃん”と対立する、家事審判所の所長……。その正体は、創立45周年を迎える劇団スーパー・エキセントリック・シアター(以下、SET)で、歌って踊ってアクションする俳優・野添義弘である。長きにわたって、劇団と映像の世界で作品を支えてきた彼のTHE CHANGEとは──。

野添義弘 撮影/有坂政晴

 SET(エスイーティー)の劇団員として1年ぶりの舞台は、第62回本公演『ニッポン狂騒時代 令和JAPANはビックリギョーテン有頂天』。43年前に野添義弘が衝撃を受けた「大笑いしたあと、考えさせられる」魅力をさらにパワーアップさせた作品だという。

「舞台となっている60年代は、アメリカで生まれたロックンロールという新しい音楽が日本語訳の歌詞で大ヒットした時代。『可愛いベイビー』とか『カレンダーガール』とか、当時ぼくはまだ3つか4つくらいでしたけど、覚えてますよね」

 同じころ、日本では学生運動の嵐が吹き荒れていた。

 カヴァーポップスと、学生運動、このふたつの世界観をSETらしい味付けで極上のエンタテインメントに仕上げる。

「ぼくらより上の世代の方には“ああ、あのころはそうだったよな”と振り返ってもらえるでしょうし、若い方たちには“こういう時代があって、今があるんだ”と感じてもらえる作品になっていると思いますね。いま、若い人の間では昭和歌謡が好きという人が増えていると言いますけど、もっとさかのぼって聴く人が出てくるかもしれない。
 舞台上では、老いも若きも一緒になって縦横無尽に暴れます。客席もあらゆる世代の方が一緒になって大笑いして、劇場を出た後にふと、何かを考えてくれたら嬉しいですね」