かつてはアヒル口のベビーフェイスで語られることも多かった瀬戸康史。30代も半ばとなった今、映す角度によって、さまざまなに発色してみせる豊かな俳優であることは、疑いようがない。正統派から笑いに振り切ったユニークなキャラクターまで、ドラマ、映画、舞台と異なるフィールドもスマートに行き来する、瀬戸さんのTHE CHANGEとは──。【第2回/全4回】

瀬戸康史 撮影/有坂政晴

 三谷幸喜監督による長澤まさみさん主演の映画『スオミの話をしよう』は、大富豪の妻スオミ(長澤)の失踪を知った元夫たちと現夫が、事件解決に向けて、てんやわんやの奔走を繰り広げるミステリーコメディ。4番目の夫・警察官の草野圭吾(西島秀俊)の部下・小磯杜夫を演じた瀬戸さんは、本作で自身初のワイヤーアクションに“なぜか”挑戦することと相成った。

──大笑いしたので、ぜひ伺いたいシーンなのですが、その前に、最初に本作の脚本を読まれたときは。

「“三谷さんだから面白いでしょ”“長澤さんなんだから、間違いないでしょ”と思って、読みました」

──長澤さん演じるスオミは、それぞれの夫によって語る印象がまるで異なる女性です。長澤さんは、そんなスオミをひとりで演じ分けていますが、同じ俳優として「大変そうだな」とは。

「めちゃくちゃ大変だと思いますよ。でも長澤さんは“天才”で努力もすごいですからね。最後のほうの、5人の夫たちと対面したスオミの一連のシーンは、僕も本編を見て“こうなったんだ”と楽しみました」

──さて、ぜひとも瀬戸さんにはセスナのシーンを伺いたく。夫たちが、ある理由からスオミのためにセスナに乗り込んで、飛ぶシーンがあります。そこで一緒に乗っていた小磯が、ある事態に陥るのですが・・・・・・。

「ハットリくんみたいになっちゃいました」

──(笑)。

「あれ、三谷さん、途中で思いついたんですよ。もともとの台本にはなくて。三谷さんは、常に言うことがコロコロ変わりますからね。だから、このシーンを僕が言われたのも、実際の撮影の数日前。そこから初めてのワイヤーアクションをやったんですよ」

──あのシーンは、ワイヤーアクションなんですね(笑)。いや、笑っちゃいけないのかな(笑)。

「僕にとっての初めてのワイヤーアクションがあれです。ハットリくんです。いまの人、ハットリくんって聞いても、分からないかな(苦笑)。すっごい楽しい現場でしたよ。みんな大爆笑してました。グリーンバックの前でやったんですけど、自分では思ったように方向転換ができないので、全身グリーンタイツみたいな人が、オレの体を支えて、こうやって(ジェスチャーをしながら)ちょっとずつ、ちょっとずつオレを迂回させるんです」