転機になったドラマ『WATER BOYS』
そんなままならない日々の中で、転機が訪れた。
「同世代との芝居が増えて、"こいつはこういうふうにやっているんだな”というのがわかってきて、みんな仕事しながら芝居の勉強していて。僕自身も、現場が勉強の場でありました」
同世代との仕事の中で特に色濃く印象に残っているのは、2003年放送のドラマ『WATER BOYS』(フジテレビ系)だった。男子校のシンクロ同好会を舞台にした青春ドラマで、主要キャストのブレイクを後押しした作品だ。
「主演が山田孝之くんで、森山未來くんや永山瑛太くんがいて。本当にこの世代のすごさっていうか、当時10代で大役をやる役者たちっていうのは、なんていうのかな……ハングリーさと自信、この2つが大事なんだと思いましたね。あとは、“なんとかやってやる!”という気概でしょうか」
ーー3人とも同作を機に主演作が急増していますね。
「孝之くんに関しては、主演が決まった時点で“泳げない”というところからスタートしたんです。みんなで合宿をして50m泳げるようになったんですよね」
ーー普通は、泳げなかったら出演自体及び腰になりそうです。
「そうじゃないですか。ムリだろうなと思うのが普通です。でも、乗り越えていく姿を目の当たりにして、“この業界で仕事をしていく人というのは、こういう人なんだろうな”と思ったんです。見えないところでたくさん努力していたと思うし。僕らは撮影はちょこっとでしたが、孝之くんたちは合宿しながら撮影もやって、ずっと泳ぎっぱなしで、振り付けも泳ぎも全部覚えて。作品にかける執念の凄みを感じました。
若手俳優にとっては、この作品に関わって“この先もやろう”と思うのか、"辞めよう”と思うのか、別れる作品だったんじゃないかと思います」
前者を選んだ渡辺さんは「僕はただ諦めが悪かっただけ(笑)」と自嘲気味に笑うが、食らいつく気概も、俳優として生き残る実力のひとつだったのではないだろうか。
わたなべ・だい
1984年8月1日生まれ、東京都出身。2002年、父・渡辺謙の青年役で『壬生義士伝~新選組でいちばん強かった男~』(テレビ東京系)でデビュー。以降、ドラマ、映画にて現代劇から時代劇までコンスタントに出演を重ねる。2018年、映画『ウスケボーイ』でマドリード国際映画祭・アムステルダム国際フィルムメーカー映画祭にて最優秀主演男優賞を受賞。今年は『大岡越前7』(NHK BS)、『笑うマトリョーシカ』(TBS系)、『さすらい署長風間昭平SP とやま庄川峡殺人事件』(テレビ東京系)に出演。10月4日より舞台『罠』、11月22日より映画『六人の嘘つきな大学生』、25年1月10日より映画『シンペイ〜歌こそすべて』の公開が控える。
舞台『罠』
作:ロベール・トマ
翻訳:平田綾子
演出:深作健太
出演:上川隆也 藤原紀香 渡辺 大 財木琢磨 藤本隆宏 凰稀かなめ
公式サイト:https://wana-ntv.jp
公式Xアカウント:@wana_ntv
映画『六人の嘘つきな大学生』
11月22日より全国公開予定
映画『シンペイ~歌こそすべて』
11月22日、長野県にて先行公開
2025年1月10日より全国公開