津田寛治さんからは「いっけいさん、迷惑なんで“こっち”に来ないでください」って、冗談で言われました

 そのときに出た映画が『いつくしみふかき』(2020年)というインディーズ作品。あの当時、僕はテレビ中心の俳優として知られていて、「インディーズやりたいんだよね」って言ってもお声が掛らない。だから、「自分から出て行かなきゃ」って思っていたら、そのタイミングで『いつくしみふかき』の話をいただいたんですよ。

 公開に当たっては、プロデューサーや役者仲間で地方の劇場に自らセールスに行ったりして。それを意気に感じて「じゃあ、ちょっと観てみるか」って言ってくれる人も出てきて、そこに面白さや刺激を感じたんです。

 ただ、俳優仲間の津田寛治さんからは「いっけいさん、迷惑なんで“こっち”に来ないでください」って、冗談で言われましたけどね(笑)。

 あと、日本映画界には才能がある人がたくさんいます。たとえば『カメラを止めるな!』(2017年)は、少ない予算の中で「成功させなきゃ」って熱が感じられる傑作でした。ああいう作品を作る人たちに使ってもらえる俳優でいたいなって思いますね。

 今回、出演させてもらった映画『追想ジャーニー リエナクト』はちょっと不思議なテイストの作品です。共演者は皆、僕より年下ばっかりだけど、それぞれの“引き出し”で勝負してくるんです。結果として、出演者の「今、自分がやりたい芝居はコレなんだ!」っていう熱がちゃんと出た作品になったと思います。

 プライベートでは還暦を過ぎました。今は体を整えるために、ジムに通うようにもなりました。自分が怠け者なのは分かっているので、長く続けられるようユルいメニューを組んでいます。ユルく頑張る。それが今後の目標です(笑)。

渡辺いっけい(わたなべ・いっけい)
1962年10月27日、愛知県生まれ。83年、大阪芸大在学中に『劇団☆新感線』に参加。大学卒業後は上京し、85年に状況劇場に入団。その後、92年、NHK連続テレビ小説『ひらり』で注目を浴び、全国区となる。以降は多くのドラマ、映画、舞台で主演およびバイプレーヤーとして活躍中。

映画『追想ジャーニー リエナクト』
スランプに陥っている脚本家・横田雄二(渡辺)の元に「退行睡眠 失った記憶を取り戻し現代人のストレスをなくします!」と書かれたメールが届く。そこで横田は退行睡眠を使い30年前の自分(松田凌)に会い、売れる脚本家へと導こうとするが……。
配給:S・D・P
10月18日(金)より、東京・渋谷HUMAXシネマ、池袋シネマ・ロサほか全国公開
(c) 映画『追想ジャーニー リエナクト』製作委員
https://www.journey-movie.net/