マツコ・デラックスが、「いま一番好きな歌舞伎界のプリンス」として紹介したこともある(『アウト×デラックス』フジテレビ系)、二代目尾上右近。歌舞伎役者としての活躍はもちろん、テレビや映画、さらにはバラエティなどでも活動し、「けんけん」の愛称でも知られる右近さんは、江戸浄瑠璃清元節における七代目清元栄寿太夫の名跡でもある。歌舞伎と清元の二刀流で輝く伝統文化のプリンスは、さらに昭和の映画スター、鶴田浩二を母方の祖父に持つ。伝統芸能と映画界の血を受け継ぎながら、自身の力で輝く右近さんのTHE CHANGEとは──。【第1回/全4回】

尾上右近 撮影/有坂政晴

 曽祖父に六代目尾上菊五郎を持ち、七代目尾上菊五郎のもとで修業を積んだ右近さん。役所広司が滝沢馬琴を、内野聖陽が葛飾北斎を演じる映画『八犬伝』では、馬琴に大きな影響を与えた鶴屋南北(立川談春)の舞台『東海道四谷怪談』で、お岩を演じている。

 このお岩を、実際に歌舞伎の舞台で初めて演じて当たり役としたのが三代目尾上菊五郎。右近さんは、200年の時を越え、先祖に扮(ふん)して、歌舞伎舞台のシーンに挑んだ。

──馬琴の妻、お百を寺島しのぶさん(父は七代目尾上菊五郎)が演じています。右近さんが三代目菊五郎さんとしてお岩を演じることについて、一緒にお話されましたか?

「むしろ“三代目の役があるんだったら、けんけんがいいんじゃない?”としのぶさんが言ってくれたらしいんです」

──そうなんですか! というか、“けんけん”と呼ばれているんですね。

「はい。『八犬伝』は去年の4月くらいに撮影したんですけど、5月にはしのぶさんのジュニアの眞秀(まほろ)くんの、初代尾上眞秀としての初舞台がありました。その舞台に僕も出させていただきましたし、今年やった僕の自主公演(第八回『研の會』)では、眞秀くんと連獅子で親子の物語をやりました」

──では寺島さんともよくご一緒になりますね。

「お稽古の間に一緒にランチしたりね。少し前にも眞秀くんが、すだちそばを食べたいとかって、大人びたことを言うので、みんなで一緒に行きました。しのぶさんが“ここは本当に美味しいのよ”と意気揚々と連れて行ってくれた場所だったんですけど、僕のリアクションが薄いと感じたらしくて、“けんけんは、あのおそばを美味しいと思ってない”と、ずっとおっしゃってました(苦笑)。ちゃんと美味しかったんですけど」