苦労した『教場』の前編
ーー映像作品への出演は『教場』が初めてでした。とまどいや苦労はありましたか?
「『教場』は前編と後編があって、僕は後編の最後のほうで木村拓哉さん、風間教官に自分の過去を吐露して本当の気持ちを言う。そこまでは自分を押し殺して寡黙に生活を送っていくというストーリーだったので、前半はとにかくオーバーにしないで我慢してこらえる、という演出で、そこは苦労しました。無意識に声のボリュームや一挙手一投足が舞台っぽいというか、舞台人なのでしかたないんですけど、ジャケットを着るときもバッとやっちゃって、まわりから“どうしたの?”なんていわれていました」
ーーかなり我慢していたんですね。
「最後のシーンのときは監督も解放していいよと、そのために呼んでいるんだから爆発させていいよといわれて、木村さんとディスカッションしながらすすめて、やっと我慢してきたものを爆発させられたんです。そこに至るまでの前半は、すごく大変でした」
『教場』後半での味方さんの熱演は名シーンとなり、大きな話題となった。その裏では舞台人としての自分を押し殺す苦労があったのだ。
唯一無二だった木村拓哉
ーー撮影をともにした木村さんには、どんな印象を持ちましたか?
「木村さんはカメラがまわっていなくても、撮影現場でずっと風間教官でいてくれたんです。リハーサル中でもずっと重い空気を作ってくれていたので、訓練生はみんな背筋を伸ばしたままでいられたんです。かと思いきや、リラックスできるムードを作ってくれたり、現場のすべてを掌握して、空気を作ってくれていました。
だから、この人だったらなにをやっても、どうぶつかっていっても大丈夫だろうなと、恐怖感もありながら安心感もありました。せっかくの機会だからいろいろ話したいと、“ここはこうしたいんですが大丈夫ですか?”って聞くと、“じゃあ、そっちでやろう”とか、全部、受け入れてくれて。本気でぶつかってきてくださったのが、本当に助かりました。撮影を通して、木村拓哉という存在は唯一無二なんだなって思いました」
ーー初めての映像作品で木村さんから得たものも多そうです。
「映像作品で初めてのシーンが木村さんと2人のシーンだったんで、こうやって現場にいるんだとか、その居方を学ぶというか。自分も今後、映像作品をやるときは、こうすればいいんだと、芝居以外でもいろいろ勉強させてもらいました」
味方さんは『教場』での演技が高評価を受け、続編にも出演。さらに現在、放送中の『嘘解きレトリック』まで、さまざまな映画やドラマに出演している。そのきっかけは『教場』への抜擢、そして木村拓哉さんだったのだ。
味方良介(みかたりょうすけ)
1992年東京都生まれ。小学生の頃よりミュージカルへの思いを強め、2011年『恋するブロードウェイ♪』でミュージカルデビュー。以降、さまざまな作品に出演し、12年には『テニスの王子様』2ndシーズンで柳生比呂士役を演じる。16年には『新・幕末純情伝』に出演、翌年には『熱海殺人事件』で木村伝兵衛役を演じ、俳優としての幅を広げた。20年には映像作品に進出し、ドラマ『教場』(フジテレビ系)に出演。近年は映像作品への出演も多く、24年10月期のドラマ『嘘解きレトリック』(フジテレビ系)では、主演の祝左右馬(鈴鹿央士)の親友で刑事である端崎馨役を演じている。