“花の82年組”アイドルにして、現在は介護職でも活躍する北原佐和子。雑誌『mcシスター』(婦人画報社)読者モデルとして掲載された写真をきっかけにスカウトされデビュー。俳優へ転身後は、昼ドラ、2時間サスペンスなど数多くの作品に出演し人気を博す。貴重なデビューの経緯、アイドル時代、さらに年齢・性別を超えて愛される、その人柄の秘密に迫った!【第1回/全2回】
ーー9月に『ケアマネ女優の実践ノート』(主婦と生活社)を出版されました。ケアマネジャー(介護支援専門員)の資格を持つ北原さんが介護の現場で体験したことを基につづった内容です。そもそも、介護の仕事をするきっかけは?
「20代の頃、大雨の日に車を運転していたら、タクシーを捕まえようとしていた手足が不自由な男性を見かけたんです。なかなか捕まえられなかったのか、全身ビッショリ。そこで思い切ってお声をかけて、お乗せしたんです」
ーー勇気を出されたんですね。
「そして目的地のご自宅に着いたら、しっかりとフェンスを掴んで一人で家に入って行く姿が、すごく力強くて忘れられなかったんです。
女優の仕事って不規則で、突然、長期間休みになることがあるんです。そうした期間に何か他のことができないかなって考えたときに、そのことが思い出され、30代半ばからヘルパーの勉強を始めました」
ーー2014年にも一度、介護をテーマにした本を出していますね。
「そのときは『三大介護』(食事、入浴、排泄)がテーマだったんです。10年たって、つくづく感じるのは“人と人とのつながり”の大切さでした。そこを、しっかり伝えたいなって思ったんです」
ーー優しい語り口調で書かれているのが印象的でした。
「書くときも話すときも、聞き手、読み手の方が、状況を思い浮かべやすいように説明することを一番に心がけています。介護を受ける方と私の関係性や、人の内面の優しさとか柔らかさみたいなものが伝われば、嬉しいですね」
ーー対人関係で悩まれている人にもオススメかと思います。
「例えば、“待つのもコミュニケーション”と書きましたけど、人って、それぞれのペースやタイミングがありますよね。ついつい自分のペースで進めたくなっちゃいますが、それが相手には不快に感じさせることもある。そうしたことを気遣うことは、健康な人、障害者、認知症の人とか関係なく、人と人との関係を築くうえでは必要なことなんじゃないかなって思います」