うれしかった後輩力士たちからの言葉
周囲への感謝の言葉を述べる玉鷲。
「自分は、連続出場などの記録にはこだわらないほうなんです。なぜかって、数字は目標じゃないと思っているから……。
でも、(連続出場記録)歴代1位の可能性が見えてきた2年前くらいから、メディアの人たちには毎場所その話を振られて、特にこの1年間は見えない圧力がかかっていたんですよ。
一番うれしかったのは、『レジェンド!』と後輩力士たちから言ってもらったこと。やっぱり、同じ職場の人たち、仲間からそう言われるのは、本当にうれしい。以前、40歳まで現役力士だったモンゴルの大先輩・旭天鵬関(現・大島親方)のことを、(敬意を込めて)『おじいさん』なんて呼んでいたこともあったけど、自分もその域まで来ちゃったんだなぁ(笑)」
玉鷲はこう言って微笑む。
秋場所は14日目を終えて、7勝7敗の五分。千秋楽は、輝と同じ高田川部屋所属の竜電との対戦になった。力士数が少ない片男波部屋所属の玉鷲は、かつて稽古相手を求めて、足しげく高田川部屋へ出稽古に通っていた。いわば、「手の内」を知っている力士同士の一戦だったのだが、玉鷲は竜電に叩き込まれて、勝ち越しを逃してしまう。
「今年は3月の春場所からずっと7勝8敗(の負け越し)が続いていたから(笑)、どうにか勝ち越して終わりたかったけれど、相手も必死。自分の力は出し尽くしたので……」
秋場所を皆勤して、通算1643回となった通算出場回数は、九州場所の土俵でさらなる高みへ向かっていくこととなった。
(つづく)
玉鷲 一朗(たまわし いちろう)
1984年11月16日生まれ、モンゴル・ウランバートル市出身。片男波部屋所属の現役大相撲力士。2024年の秋場所で大相撲の通算連続出場回数、歴代1位の記録を更新。スポーツ経験が特に無いまま19歳で相撲を始め、30代から力を付けたという、同世代のモンゴル人力士の中でも異色の経歴を持つ。身長189cm、体重178kg。血液型はAB型。最高位は東関脇。趣味は小物、菓子作り、人間観察。