オーディション会場に到着すると、眼前に驚きの世界が広がっていた
やがて書類選考を通過して、実際にオーディションに向かうことになる。
「オーディション会場は、青山3丁目に当時あったベルコモンズ。そこの6階か7階かな。フリースペースがあって、エレベーターが開くとそこにはバーンってかもめの絵があって。
そこにブルーと紫、赤のライトが当たって、周りは真っ暗なんです。お化け屋敷みたいな感じのその場所に入っていくと、今度はなんだか深海みたいに真っ暗な中に、白塗りの素っ裸の女の人……毛も剃ってましたね。その女性が踊ってるんですよ。それを他の女の子が真似てたり……。そういう不思議な世界が展開されてて、でも常にシーンとしていました。
“わー何だろう”としばらく見ていたら、後ろからカランカランと音がして。“なんだ、うるせえな”ってパッと睨んだら、体の大きな人がいて、“あれ? この人、テレビの競馬中継に出てたな……寺山修司かもしれない”と思って(笑)、慌ててすぐ顔を戻したのを覚えてます(笑)。
寺山さんは当時、ぽっくりサンダルというものを履いていて。足音がして、ピタッと僕の真後ろで止まったんです。“え?”と思ったら、トントンって肩を叩かれて。“君はオーディションに来たの?”って言うから、“はい”と名前と受付番号を答えると、“じゃあね”って言って行ってしまいました」