山田杏奈から見た、映画『正体』主演の横浜流星とは

──友達との電話のシーンがありますが、そこにも舞の人物像がのぞきます。

「ケア施設で夜勤のときに電話しているシーンでは、藤井監督から“ちょっと、なんだかな”という顔をしてほしいというお話がありました。そこに彼女らしい面が出るというか。プライドや強がりとか、周りに変に心配かけたくない思いもあったりして。そういうところって、誰しもあるのかなと。より近づいて見ていただける要素が出ているかなと思います」

──かなり具体的な演出法なんですね。

「ロジカルにというより、とても感情に寄り添って演出してくださる印象でした」

──主演の横浜さんにはどんな印象を持ちましたか?

「ものすごくストイックな方だと感じました。普通に世間話もしましたが、そんなに現場でたくさん話をしたわけではなく、横浜さんは、ただただ鏑木としてそこにいる時間が長かったのかなと、私には見えていました。
 常に鏑木さんとして必死にもがいている姿を感じていましたし、すごいなと思って見ていました。対峙する相手としても世界に入りやすくなりますし。それから、監督と横浜さんの関係性がすごくできている現場だと感じました」

──横浜さんは脚本づくりの段階からタッチされているようですし、かなり密な関係のようですね。

「そうですね。ものすごく仲のいいおふたりだと感じましたが、仲の良さとお芝居の演出って、どうやって両立しているんだろうとも思っていました。きっとおふたりなりのバランスがあるんだろうと思います。とにかくお互いを信頼し合いながら作っている感じが現場全体の空気をつくっていて、すごく集中して進められる現場でした」

 初の藤井組で、山田さんが受け取ったものも多いようだ。

山田杏奈 撮影/松島豊

やまだ・あんな
2001年1月8日生まれ、埼玉県出身。2011年に少女漫画雑誌主催の『ちゃおガール2011★』オーディションでグランプリを受賞し芸能界入り。2018年、『ミスミソウ』で映画初主演。2023年の『山女』で第15回TAMA 映画賞最優秀新進女優賞を受賞した。2024年公開の映画『ゴールデンカムイ』においてヒロインのアシリパ役を好演し、現在はWOWOWにてシリーズのドラマ版である『ゴールデンカムイ -北海道刺青囚人争奪編-』が放送中。ほか主な出演作にドラマ『新米姉妹のふたりごはん』(テレ東)『17才の帝国』(NHK総合)、映画『小さな恋のうた』(2019)『ひらいて』(2021)『彼女が好きなものは』(2021)など。映画最新作は『正体』。

●作品情報
映画『正体』
原作:染井為人
監督:藤井道人
脚本:小寺和久、藤井道人
主題歌:ヨルシカ
出演:横浜流星、吉岡里帆、森本慎太郎、山田杏奈/山田孝之
配給:松竹

(c)2024 映画「正体」製作委員会