「さすがにこれは、大きな病院に行ったほうがいい」
痛む場所を触ると、さらに違和感を覚えた。直感的に「さすがにこれは、大きな病院に行ったほうがいい」と思ったという。
「どの科に診てもらえばいいのかわからないので、なんとなく脳に近いからに脳神経外科でCTを撮ってもらいましたが、原因がわからず。痛み止めをもらいつつ口腔外科を勧められたんです。2日後に口腔外科に行き、レントゲンを撮っても“なにもない”と言われて……」
するとその日の夕方、CTを撮った病院から連絡があった。
「よく見ると右側になにかがある。1週間後に来てほしい」
少し緊迫感を帯びた口調だったが、藤乃さんは「あるんかーい! と思った」と明るく振り返る。
「それから1週間ずっと痛みを我慢しながら再診察待ち、その翌週に今度は耳鼻科で検査をしました。結果、副咽頭間隙腫瘍の疑いがあると言われました。"90%が良性の病気だから、たぶん大丈夫だと思う”とも言われつつ、大きな病院を紹介されてすぐに行くと、“悪性の可能性が高い”と言われたんです」
いつの間にか暦は年末になっていた。強い痛み止めを処方してもらい、激しい痛みと戦いながら2023年を迎えた。1月6日、検査入院し生体検査の手術を受けたが、「手術した場所からがんが飛び出てきちゃった」というのだ。
「いつの間にか、喉の腫瘍がピンポン玉くらいの大きさになっていて、息もしづらい感じになっていたんですよ。さすがに“これヤバくない……!?”と思って、それから2週間後の検査のときに“これ、大丈夫ですか?”と聞くと、“腫瘍が大きくなるスピードが速すぎる、あと1週間遅れてたら窒息死していたと思う”みたいなことを言われて。マジかー! となりました」
1月27日、生体検査の結果として、悪性腫瘍の横紋筋肉腫であることが伝えられた。
「もちろんショックではありましたが、“マジかー!”という感じでしたね。こんなに大きな病気になると思っていかなったし。“あ、なるんだ”みたいな。びっくり、という感情が一番大きかったです」
ーーその間、お仕事はどうしていましたか?
「1月28日に名古屋でトレカイベントがあったんですよ。だから普通に名古屋でイベントを開催しました。だって、普通に事前に入っていた仕事だったし、買ってくれる人は予定を開けて参加してくれているし。たしかにその後いろいろな人から"すごいね”と言われましたが、そのときは中止にするなんてまったく頭にありませんでした」
切迫した状況を終始ラフに話す藤乃さんからは、シリアスな雰囲気に飲まれないようにという記事を読むファンへの心遣いが垣間見えたのだった。
(つづく)
藤乃あおい(ふじの・あおい)
1998年9月29日、石川県出身。2020年7月にデビューすると、同年11月発売のデビューイメージDVD『w.a.l.k!』が「グラビアアイドル・イメージビデオ年間売上」(DMM)で1位を獲得。2021年12月には、「グラビア・オブ・ザ・イヤー2021」(キネマ旬報社)でグランプリを受賞した。現在までにDVD10本をリリースし、11月27日には最新作『再会の瞬間』(スパイスビジュアル)を発売。