シリアスからコメディまで、幅広い作品で唯一無二の個性を放つ俳優、小倉久寛。劇団『スーパー・エキセントリック・シアター』の旗揚げから45年間、三宅裕司と共に歩み続けてきた小倉久寛のTHE CHANGEとは──。【第2回/全4回】

小倉久寛 撮影/松島豊

 大学生時代に見た、中村雅俊主演のテレビドラマ『俺たちの祭』(日テレ系)に憧れて演劇に興味を持ち、三宅裕司が出演する『大江戸新喜劇』の舞台に感動して、俳優の道に一歩足を踏み出した小倉久寛。しかし、その道は想像を超えて険しかった。

「『大江戸新喜劇』に入ってすぐ、お芝居に出ることになったんですけど、演技のいろはもわからないわけですから、演出家から叱られっぱなしですよ」

 例えば、どんなことで叱られたのだろうか?

「いちばん覚えているのは“笑うな!”というダメ出しですね。真面目なシーンで、ぼくだけ笑ってるって言うんです。でも、自分としては全然笑ってなんかいないんですよね。だから“笑ってません!”って反論するんですけど、“自分じゃ笑ってるつもりがなくても、お客さんから見て笑っているように見えたら、それは笑ってるってことなんだよ!”と、また叱られる。いまだったら演出家が言ってる意味がわかるんですけど、当時のぼくには全然わかりませんでした」

 他にも、意外なものを見つけてびっくりするシーンで「それじゃあ、見つける前からわかってるんだよ!」「見つけた人間はそんな顔しないだろう!」などなど、叱られることには事欠かなかった。

「シュンとしていると三宅さんがやってきて“だいじょうぶ、おまえはおもしろいから、そのまま行け”と慰めてくれて……嬉しかったですね」