やっぱり私は、演歌歌手の夢をあきらめられない

 つらい仕事も、いつか歌える日が来ると思ってがんばった?

「いえ、そのときはつらいと思っていなかったし、いただいたお仕事をちゃんとやろう、と一生懸命にやってました。でも、ふと我に返ったとき、“やっぱり私は、演歌歌手の夢をあきらめられない”と強く思ったんです」

〝HOP CLUB〟を1年で卒業し、別の芸能事務所に移籍。

そして2005年8月、「岡美里」は、演歌歌手「丘みどり」としてデビューを果たす。

「デビュー曲は『おけさ渡り鳥』。ついに夢が叶った! と、めっちゃ嬉しかったです。ただ……衣装を見たときは、かなりショックでしたね」

 21歳の美人演歌歌手に事務所が用意したのは、ミニスカートのヘソ出しルック。彼女はこの衣装で、全国のスーパーやレコード店などをキャンペーンでまわった。

「真冬の雪が舞う屋外でも、この衣装。でも私は“この衣装で歌うのがプロ根性”だと震えながら歌っていたのですが……」

————見ている方が寒い。そんな格好で演歌を歌うな。

お客さんからの辛辣な声に、心も凍えそうになった。

「でも、一番こたえたのは、私がきれいなお着物で歌うことを待ち望んでいた祖母を、がっかりさせたことでした。“そんな格好で歌うんなら、地元のお祭りには来んといて。恥ずかしいから”と悲しそうな顔で言われたときは落ち込みました。弟も“おまえの姉ちゃん、ヘソ出して演歌を歌ってる”とからかわれたと聞いて……。私は好きな演歌を歌えるのだったら、おへそを出すくらい何でもない! と思っていたけど、家族がイヤな思いをするのは、とてもつらかったです」

 そして10年が経つころ、丘みどりは、歌手生活を振り返ってもっとも大きなTHE CHANGEだったという決心をすることになる。

(つづく)

丘みどり(おか みどり)
1984年7月26日生まれ。兵庫県姫路市出身。11歳から数々の民謡コンクールで優勝。2002年にアイドルデビューするが、演歌歌手への夢を追い求めて2005年に『おけさ渡り鳥』で演歌歌手としてデビュー。2016年に第9回日本作曲家協会音楽祭「奨励賞」、第49回日本作詩大賞「優秀作品賞」を受賞し、2017年から3年連続でNHK紅白歌合戦に出場。2024年12月25日にオリジナル曲とカバー曲を収録したアルバム『JOURNEY』をリリース。

【作品情報】
舞台『おちか奮闘記』
2025年1月2日(木)〜26日(日)
三越劇場
作:川口松太郎(『浪花女』より)
補綴・演出:成瀬芳一 
出演:丘みどり
三田村邦彦、河合雪之丞、賀集利樹、松本慎也、瀬戸摩純 ほかhttps://mitsukoshi.mistore.jp/bunka/product/7050900000000000000002982412.html?rid=7b90e5db143c44a3a02acbf947dfdfa0

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