篠原涼子さんといえば、1990年代から音楽にドラマ、映画と幅広く活躍を続けてきたマルチアーティスト。今年2024年の12月25日からは舞台『見知らぬ女の手紙』(東京・紀伊国屋ホール)で濃厚なメロドラマの世界を表現していく。10代からいまに至るまで、多彩な人の生きざまを演じてきた篠原さんのTHE CHANGEとは。【第2回/全4回】

篠原涼子 撮影/有坂政晴 スタイリスト/ゴウダアツコ ヘアメイク/岡野瑞恵

「脚本を読めば読むほど解釈が変わってきました。この女性は、傍から見ると狂気的かもしれないけど、読み込むと切ない気持ちにも襲われます」

『見知らぬ女の手紙』では、首藤康之さんが演じるピアニストの男性を13歳から28歳まで愛し続けた「見知らぬ女」を篠原さんがひとりで演じる。

「首藤さんとポスタービジュアルを撮ったとき、そこにいる“男”(首藤さん)は“女”の想像で、本当は彼女1人しかこの場にはいないんだと想像しながら撮影に臨みました。彼が側にいたら、彼女はもっと幸福そうな顔をすると思います。だからポスターの表情は悲しげなんですが、彼への強い思いは内に燃えさかっています」

 篠原さんは、役柄について「少女のようにピュアな人だな」と感じた。

「この女性は13歳で初めて人を好きになって、初恋の情熱そのままに年を重ねていくんです。そこから18歳で初めて顔を合わせることができるまでの間、彼には全く気付かれない。ほんのわずかな逢瀬(おうせ)で彼はまた旅に出てしまい、再会したときにも覚えてもらえていなくて。一度の逢瀬(おうせ)で生まれた子どもも亡くなってしまうけど、そんな状況でも“自分が一番彼を思ってきた”と自負して、幸福な気持ちで一生を生きたんだろうと思います」

 脚本を読むうちに、劇中の彼女の恋心が伝わってきた。

「真冬に床に寝そべって、彼が帰ってくる足音も聞き逃さず、一睡もしないで待っているような人です。いくら恋人のことが好きでも、そこまでするかと(苦笑)。でも、彼が帰って来れば痛みも寒さも忘れるくらいに身体が愛で熱くなる。しかも、そのことを手紙で語るまで、彼本人には一切語ってこなかったんです。
 だから彼が彼女のことを覚えていないのも当然なんですが、彼女自身は人生の苦労を彼に見せたくなかったんですよね。それって本当は強い人だし、肉体が消えても魂だけで彼を愛したい。そこまで愛の力を信じられるってすごい人です。私のしゃべり方ひとつで伝わる印象が全く変わってきますから、そんな若さゆえの純粋さを感じ取ってもらえるよう舞台を作っていきます」

篠原涼子 撮影/有坂政晴