今回の夫婦役を通して思う人との関係性や距離間
乃木坂46在籍中には、その人柄から“聖母”の愛称で親しまれ、プロデューサー曰く「学級委員長のような真面目な印象があった」深川さんだが、取材時はシックな黒の衣装を身に纏い、どこかミステリアスな雰囲気も感じられた。本作で演じたのは徐々に精神を病んでいく妻・杏奈。
「杏奈は家事をしながら働いているんですが、お仕事が好きで、年齢設定が私に近いということもあって共感しやすかったです。前半は、事件と言いますか日常の怪異に巻き込まれていくんです。最初は明るかった夫婦がどんどん精神的に崩れていく様子を繊細に演じることが大切だと思ったので、そこは丁寧にグラデーションのように出来れば……ということを意識していました」
夫婦は村民たちの度を越えたおせっかいに辟易しつつも、新天地でのスローライフを楽しんでいたが、物語の中盤で杏奈は身籠り、出産する。
「これまでにも母親役を演じたことはありましたが、そここまで長い間赤ちゃんと接したものは初めてで。今回で言うと、子供を産んで村人たちが“面倒を見るよ”と言って家に来てくれたりするんですが、そういう時にどういう気持ちになるのか、どこまで子供に触れられたら嫌かなのか、周りで既に子供を産んでいる友達やスタッフさんに聞きながらあんばいを探っていきました。杏奈にとって出産は人生で初めてのことなので、子供をどう扱っていいのかわからない部分もあるでしょうし、たぶん精神的にも不安定になると思ったんです。そのうえで、どこまで他人に介入されたら不快に思うんだろうと」
移住した麻宮村は長閑な田園風景が広がる美しい村だが、夫婦生活に過剰に干渉してくる自治会長夫婦や筒抜けのプライベートなど、理想だった田舎暮らしが次第に苦痛へと変わっていく。そんな杏奈に共感できる部分もあったーー。
「子供を産んだ杏奈に対して村人たちが“ありがっさま(有難う)”と言ってくるんです。なんで“おめでとう”じゃなくて“ありがとう”なんだと杏奈も感じると思うんですが、それは私自身も同じで、ちょっと怖いと思ってしまうかもしれないですね。夫の輝道に“子育ては母親がちゃんとやるでしょ”と言われるシーンでは、 “そこは協力してやるものでしょ”と私も思いますし、杏奈がイラっとする気持ちはすごく理解できました(笑)」
今回の夫婦役を通して、深川さん自身が思う人との関係性や距離間についてはーー。
「距離感でいうと、急に入られ過ぎるというのは、私自身もやっぱり苦手ですね。“はじめまして”に近いのに、いきなりパーソナルスペースにぐいぐい入られすぎると逆に警戒してしまうかもしれません。もっとも、ちゃんと関係性が出来ていたら全然ウェルカムなんですけど(笑)」
(つづく)
深川麻衣(ふかがわ・まい)
1991年3月29日、静岡県生まれ。2011年、アイドルグループ「乃木坂46」の第1期生オーディションに合格。2017年、舞台「スキップ」で 初主演 。2018年には主演映画『パンとバスと2度目のハツコイ』で TAMA映画賞最優秀新進女優賞を受賞 。主な出演作として、『愛がなんだ』(19)、『水曜日が消えた』(20)、『今はちょっと、ついてないだけ』(22)、『パレード』(24)などの映画や『アイのない恋人たち』(24)、『イッセー尾形の週末父娘』(25)などのドラマがある 。映画『おもいで写眞』(21)、『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』(23)では主演を務め、昨年は舞台「他と信頼と」、朗読劇「ハロルドとモード」などでも活躍の幅を広げている。
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監督:城定秀夫
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