坂東さんはとても自然体で現場に居る方

 洋子を演じる上で心掛けたポイントを尋ねると……。

「洋子は働いていますし、亡き夫と住んでいた大き過ぎる家に一人残って住み続けているので、本当に一人っきりの時間が長かったんだろうと思うんです。そういうことを想像させるような暮らしぶり見せたいというのはありました。やっぱり最初は、息子を心配する母親の部分が多くを占めていたんですけど、けっして人には見られたくない自分だけのエリアに息子が触れてしまい、そこから親子の関係も少しずつ変化していくんです。母として息子を救いたい、助けてあげたいという気持ちが強かったけど、物語の後半では逆に息子の言葉に気付かされたり救われたり励まされたり……という部分があって、とてもよく出来ている台本だなと思いました」

 監督、脚本を務めた作道雄監督については──

「ものすごく静かに現場を進める監督さんで、お若いのにすごく安心感があるんです。具体的にこう動いてくれとかああ動いてくれという指示などはなく、現場ではまず、それぞれが持ち寄ったものをリハーサルで見せ合って、その時の俳優の感情をすごく大事にする、そのうえで気になるところがあれば指摘する……という演出法でした」

(c)「君の忘れ⽅」製作委員会 2024

 撮影はほぼ順撮りで行われた。

「演じる役の心情に自分を持っていくまで時間がかかる場合もかからない場合もありますけど、今回の洋子はかからなかったですね。後半で昴と対峙して親子の関係が確実に変わるシーンがあるんですが、そこはほとんどテストをしないで撮ったんです。監督も、“シチュエーション、心情が出来ていればすぐ撮ります”という感じでカメラを回しました」

 昴役は昨秋放映されたドラマ『ライオンの隠れ家』(TBS系)で、主人公の弟役を演じ、そのリアルで繊細な演技が大好評を博した坂東龍汰。

「坂東さんはとても自然体で現場に居る方でした。撮影前に親子の会話というシチュエーションで二人だけでリハーサルをする機会があり、作道監督と一緒に台本を読み合わせしたんですけど、私もすごく自然に入っていけました。このシーンをこうしよう、ああしようという相談は一切しないで、本当に現場でキャッチボールしながら作っていける俳優さんでした。私もすごく自然に息子を見る目になっていたし、演じていて楽しかったです」

 『君の忘れ方』では母親役を演じた南さん。その幼少期はオードリー・ヘップバーンやカトリーヌ・ドヌーブに憧れる洋画が大好きな少女だった。

(つづく)

⾐装:FABIANA FILIPPI(アオイ 03-3239-0341)、TASAKI(0120-111-446)

南果歩(みなみ・かほ)
1964 年 1 ⽉ 20 ⽇⽣まれ、兵庫県出⾝。A型。T162㎝。 1984年、映画『伽椰⼦のために』(⼩栗康平監督)でヒロイン役に抜擢されて⼥優デビュー。その後、テレビや映画、舞台で幅広く活躍。近年では、朗読にも定評があり、東⽇本⼤震災、熊本 地震、能登半島地震後などの被災地へボランティアで出向き、⼦どもたちに絵本の読み聞かせも⾏っている。最近の出演作は、海外ドラマ「Pachinko パチンコ」(AppleTV)、映画『義⾜のボクサー GENSAN PUNCH』(22)、『MISS OSAKA/ミス・オオサカ』(21)、舞台「これだけはわかってる 〜Things I know to be true」(23)、「⽊のこと The TREE」(24)。著作にエッセイ「⼄⼥オバさん」、絵本「⼀⽣ぶんの だっこ」など。 公開待機作 に映画『ら・かんぱねら』、『ハジマメシテ!(原題:Rules of Living)』、韓国映画『蕎麦(そば)の花咲く頃』、台湾映画『腎上腺(英題:Adrenal)』などがある。

【作品情報】
映画『君の忘れ方』
出演:坂東龍汰 西野七瀬 円井わん 小久保寿人 森優作 秋本奈緒美 津田寛治 岡田義徳 風間杜夫(友情出演) 南 果歩
監督・脚本:作道 雄 
エンディング歌唱:坂本美雨
1月17日(金)より全国公開
配給:ラビットハウス
Ⓒ「君の忘れ方」製作委員会 2024公式サイト
公式サイト https://kiminowasurekata.com/