「自信なんてないんですが、その瞬間だけは何者かでいられる」

 こうした作品を積み重ねることで着実に「自信」を持ちえたのではないですか?と尋ねると、「それでも自信は常にありません」、「自信は僕にはないんです」と語る三浦さん。しかし「自信がない」からこそ生まれる、作品に対するまっすぐさも感じられる。

「初演の『オイディプス王』の稽古期間中も精神的にも肉体的にもボロボロだったんですが、本当に皆さんに支えてもらって、舞台に立つその瞬間だけは自信が持てたと思います。オイディプスになったときだけは自信を持てるというか。自信なんてないんですが、その瞬間だけは何者かでいられる。そういう瞬間を作ってもらったことに感謝しかないです」

 役者として作品、役と向き合うことが三浦さん自身の立つべき場所を明確にしてくれているようだ。

「僕はこの世界に入っていなければ、きっと何者にもなれなかったと思うんです。本当に自分に自信が持てない生活をしてきましたから。どこか、いつも一人ぼっちの感覚がありました。

 ですが、この世界に入ってから、演出してくださる方やスタッフ、キャストの皆さん、応援してくださるお客様のおかげで、僕が何者かになれる瞬間があるわけですよね。自分ではない何者かになることで、またそのキャラクター、その役の人生を知ること、歴史を歩むことで、自信を持たせてくれるという、この感覚。これはもう本当にこの仕事を始めたことで知ることができました。間違いなく僕にとっての唯一の場所、という感じがします」

三浦涼介 撮影/三浦龍司