父と弟の影響で始めた空手が運命を変える
しかし、俳優への道のりは厳しく演技のスクールにすら受からない日々が続いた。中学2年生の時にレッスン生として初めて俳優養成所に所属することが出来たが、ちょうどその頃に転機となる出来事があった。
「父と弟が空手をやっていて、私も色々と道場見学について行ったりしていたんですが、自分が(空手を)やりたいとは1ミリも思っていませんでした。ある時、父と弟の空手の大会を見に行った時に二人とも一回戦で負けてしまい、自分が出たわけじゃないのに自分が負けたかのような悔しさを人生で初めて味わったんです。“これは私がリベンジするぞ!”って、次の日には入門しました(笑)」
武田さんが入門したのは琉球空手の流れを汲む月信会だった。入門後の2008年、高2の時に俳優でプロデュサーでもある西冬彦氏に出会い、映画『ハイキック・ガール』での主演に繋がった。
「当時、最初に入った事務所との契約も切れてフリーでした。やっと掴めたチャンスだったのにこの先どうしよう……と悩んでいた頃、ブログに“空手やってます。女優目指してます”と書いたんです。それをたまたま見かけた西さんから“こういうアクション映画を撮るので、もし良かったら参加しませんか”というメッセージを戴いて、オーディションを受けました」
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結果、見事に合格。映画初主演を果たす。
「決まった時は夢なんじゃないかって。主役のオーディションでしたので、私なんてそれまで実績もないし、ちゃんとしたお芝居の経験すらなかったので、まず受からないだろうと思っていたんです。主役じゃなくていいから選んでいただけたらラッキーぐらいに思っていたので、決まったという知らせを聞いた時はもう嬉しくて、それこそ舞いあがってしまいました(笑)。初主演という不安よりも喜びの方が大きかったです。これをちゃんとカタチにして、次に繋げて自分の夢を切り開いていこう…という気持ちでした」
『ハイキック・ガール』はスタントやCGを使用していない実践志向の空手アクション映画として、海外からの評価も高い。
「実際に現場に入ってからは、本格的にプロの方たちに囲まれて自分がメインとして現場に居ることに対してのプレッシャーはありましたね」
そして、この『ハイキック・ガール』など、空手のアクション映画への出演が冒頭で記した頭突き瓦割りのセゾンカードのCM出演に繋がった。
「これもオーディションで決まったんです。撮影現場には医師の方もいらして、やり過ぎると身体に良くないからと、やっても3回までと言われていたんです。2テイク目で全部割ることができて良かったです」
結果、このCMは大反響を巻き起こした。
「CMを撮っている最中は“面白がってもらえたら良いな~”ぐらいにしか思っていませんでした。でも、放映後の反響は想像していた以上で、こんなにもたくさんの人が見てくれているんだと驚きましたし、嬉しかったです。私を知っていただくという意味では大きなきっかけになりましたね」
このCMで大きく認知度を上げた武田さんは、俳優として更なる飛躍をみせる。
(つづく)
武田梨奈(たけだ・りな)
1991年6月15日生まれ。神奈川県出身。AB型。T157㎝。10歳の時に空手道場に入門。琉球少林流空手道 月心会黒帯を持つ。2009年に映画『ハイキック・ガール!』 (西冬彦監督)で主演に抜擢される。その後、2013年には『デッド寿司』に出演し、テキサスのFantastic Film Festival 2012にて主演女優賞、第1回ジャパンアクションアワードのベストアクション最優秀賞(女優)を受賞。2014年、『祖谷物語-おくのひと-』では、第24回日本映画プロフェッショナル大賞新進女優賞受賞。その他の主な出演作に、映画『いざなぎ暮れた。』、『ジャパニーズスタイル』、『室町無頼』ドラマ『封刃師』、『ミラー・ツインズ』、NHK連続テレビ小説『虎に翼』などがある。
【作品情報】
ドラマ『ワカコ酒 season8』
BSテレ東にて毎週水曜日 深夜24:00~、
テレビ東京にて毎週火曜日 深夜2:35~放映中。
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公式サイト https://www.bs-tvtokyo.co.jp/wakako_zake/