緊張感があったディーラーとしての所作

 キャラ的にはとてもクールで、どこか一匹狼的。実際、「私に仲間はいらない」というセリフもあった。

「きっと諦められたのは彼女にとって生きる術だったと思うんですけど、周りにそれを共有してくれる仲間もいなかったんじゃないかと私は思っているんです。“ちょっと聞いてよ”と愚痴をこぼせる仲間もいない状態で自分を納得させていくしかなかった。それを毎日のように続けていくと、一人でいる方が楽だし、自分で消化していた方が整合性に気付いていく……そんな感覚がラモーナにはあったのかなって」

 ラモーナとともに、映画にはカジノ王・ウルフ(石橋凌)や財閥企業の社長・宇喜多(田辺誠一)など劇場版から登場するキャラクターが壮大な闘いを繰り広げる。その舞台は一夜にして大金が動く豪華絢爛なカジノリゾートだ。 セットのカジノのゴージャスぶりには目を見張る。

「会場全体がカジノの機材やポーカー台で埋め尽くされていて、“That‘s カジノ”という感じでした。私はそこに溶け込めばよかったんですが、海外のウルフのカジノでのシーンでは機材がなかったんです。そこにディーラー然として立っていないと、自分の所作ひとつでカジノに見えなくなるんじゃないかという緊張感がありました」

──緊張感があったということですが、そうなると演技を100%発揮できなかった?

「緊張が上手く作用するタイプではないので、そういった局面はあったかもしれないですね。どちらかというと、ただ演技をするだけであれば、そんなに緊張するタイプではないんですが、カードなどを使っての演技となると、そちらにも気を遣わなくてはならないので……ものすごく緊張しました。ですので、パフォーマンスが100%だったかと言われると、ちょっと難しいかもしれないですね。本物のディーラーの方なら“今のカードは……”とか、考えないと思うんです」

──でも、カード捌きとかは見事でしたよ。

「ほんとですか?(と言って小さくガッツポーズ)カードの捌き方は撮影に入る1か月前から練習させてもらったんですけど、もっと早くから始めていたら良かったと思いました。プロの方が傍目からは簡単にやってらっしゃるように見えたことが、実際にやると本当に難しくて。ちょっとした力加減や環境によって上手くいかないこともありますし、使ったことのない指の筋力を使わなければならなかったので、それは1か月やそこらでは賄えなかったです。でも、観て下さった方が違和感無く私がカードを捌いているように見えたら、それは嬉しいです」

 俳優としても様々なパフォーマンスを見せてくれるシシドさんの人生における大きな出会いとは──。

(つづく)

シシド・カフカ(ししど・かふか)
メキシコ生まれ。ドラムヴォーカルのスタイルで2012年「愛する覚悟」でCDデビュー。2013年にファーストアルバム『カフカナイズ』を発売。以降セッション・ミニアルバムを含む4枚のアルバムをリリース。また、俳優としては2014年「ファーストクラス」(フジテレビ系)を皮切りに、2017年NHK連続テレビ小説ひよっこ」に出演し話題を集め、2020年にはNHKドラマ10「ハムラアキラ〜世界で最も不運な探偵〜」にて主演も務めた。NHK BSプレミアムで放送されている「巨樹の国にっぽん」シリーズをはじめ、ドキュメンタリー映画や番組でのナレーションも務めるなど、多方面で活躍中。2018年にはアルゼンチンに留学してハンドサインを学び、同年よりリズム・プロジェクト「el tempo(エル・テンポ)」をディレクションしており、2021年に東京パラリンピックの閉会式に出演したことでも話題となった。

【作品情報】
劇場版『トリリオンゲーム』
出演者: 目黒 蓮 佐野勇斗 今田美桜 福本莉子 
鈴木浩介 竹財輝之助 あかせあかり 原 嘉孝 津田健次郎
シシド・カフカ 田辺誠一 石橋 凌 / 吉川晃司 國村 隼
原作: 稲垣理一郎/作画:池上遼一 『トリリオンゲーム』(小学館 ビッグコミックスペリオール 連載)
監督: 村尾嘉昭
脚本: 羽原大介
主題歌: Snow Man 「SBY」 (MENT RECORDING)
公開:  2 月14 日(金)全国公開
配給: 東宝
(c) 2025 劇場版『トリリオンゲーム』製作委員会
(c) 稲垣理一郎・池上遼一/小学館
公式サイト ​https://trilliongame-movie.jp/