現在の研究について熱く語ってくれたいとうまい子さん

「いまの研究内容は、カロリー制限模倣物質の探索です。人ってある程度年齢を重ねると、心臓の病気だったり高血圧だったり、いろいろな病気が出てきますよね。そうすると長生きできないし、長生きできたとしても健康寿命が短い。

 そんななか、“カロリー制限をすると寿命が伸びる”というのは、人間以外の動物ではすべて実証されているんです。でも人間だけは、何十年もカロリー制限できない。生まれてから亡くなるまでずっとカロリー制限をして生きていくのは辛いですよね」

 いとうさんは生き生きとした表情で、よどみなく解説してくれる。

「でも、カロリー制限模倣物質というものがありまして。たとえば赤ワインに含まれるレスベラトロールという成分を摂ると、細胞が“あれ? いま、もしかしてカロリー制限しているんじゃないか?”と勘違いするんです。そうすると、たくさん食べているのに細胞自身が勝手にスイッチオフ状態になり、カロリー制限している状態になるんです。と、そういう成分が、別の食品の中にも化合物として含まれているんじゃないかということを、細胞培養しながら実験を繰り返しています」

いとうまい子 撮影/三浦龍司