「この人の代表作といえば?」と聞かれたら、ある人は大河ドラマ『風林火山』で演じた軍師・山本勘助や、ドラマ『JIN-仁-』の坂本龍馬、はたまた『きのう何食べた?』の矢吹賢二(通称・ケンジ)など、人によって挙げる作品や役名がこれだけ多岐にわたる役者もそういないだろう。豪快で型破りな人物から、繊細さを秘めた役柄まで、徹底した役作りと演技力で巧みに演じているのが、俳優・内野聖陽さん(56)だ。
 早稲田大学在学中に文学座附属演劇研究所に入所。デビュー後は、映画や舞台、ドラマなど幅広く活躍し、学問や芸術といった領域で功績を残した人に贈られる「紫綬褒章」をはじめ、多くの演劇賞を受賞している。30年以上を役者として歩んできた内野さんに、最近起こった変化とは?【第2回/全4回】

内野聖陽 撮影/冨田望 スタイリスト/中川原寛(CaNN) ヘアメイク/佐藤裕子

 2月23日からWOWOWで放送・配信される「連続ドラマW ゴールドサンセット」では、内野聖陽さん演じる阿久津らが所属する、55歳以上であることが参加資格の劇団「トーラスシアター」の面々がひとつの見どころでもある。それぞれが生きづらさや苦悩を抱えながらも、劇団「トーラスシアター」を通じて自分自身を見つめ直し、人生の意味を見出していく老若男女の再生の物語だ。プロの役者として歩んできた内野さんが、本作を通じて思う“演劇の効能”とは。

――公式サイトのコメントで本作について「シニア世代の煌めくような瞬間」と表現されていましたが、どんなところに煌めきが感じられたのでしょうか。

「本作は、阿久津だけではなく、シニア劇団の演劇を通してそれぞれが第二の人生を豊かなものにしていく人たちの話でもあるんです。僕は役者という職業をしていますが、“演劇”って一般の方には割と特殊な世界だと思うんですよね。組織の中で働いてきた人たちが、自己表現に出会うことで再び自分の存在意義を確立していくことってとても希望があるしいいことだなと思うんです。

 たとえば、コーラスや書道をやってみたり、絵画や俳句を始めてみたりするのと一緒で、自分が表現することを誰かに見せて、それで認めてもらうことはこれからの時代、すごく大事になってくる気がするんですよ」