どんな役でも「いつもどこか共鳴できるところを探しています」

――誰かから認めてもらうことで、自分の存在意義を見出していることにつながるのでしょうか。

「今はSNSなどで自己表現をしていらっしゃる方も多いでしょうし、“いいね”をもらって自己の存在意義を確認しているんでしょうけど、バーチャルな世界よりももっと充実した世界が演劇の世界には広がっている気がするんです。なので、今まで仕事や子育てなど、何かを成し遂げた方々がものを表現することで、また新たな自分探しになることはとてもいいよねって思うんです。

 それに、僕自身が演技によって自己の存在意義を確認できたみたいな歴史があるんです。なので、演技をすることってプロの役者だけじゃなく、市井の皆さんにも解放されていいものだと思うので、シニア劇団の試みというのは、もっともっと増えてきてもいいんじゃないかなと思います」

――これまで数多くの作品にご出演されていますが、本作で演じた阿久津がリア王に重ねたように、ご自身の人生を重ね合わせるような役や作品は何かありましたか?

「自分とは全く違うなと思うキャラクターもこれまで色々演じてきましたが、どの役にも、どこかしら自分と1μ(ミクロン)でも共感できる部分はないかなって探すんです。なので、どの作品、役にも“内野聖陽”の血肉は投影されているという気がするんですよね。だから、“どの役が一番自分と重なったか”と聞かれるとどれだろう?と思うのですが、いつもどこか共鳴できるところを探しています。

 むしろ、そういうものがないと表現って力を持たないんですよ。どこかに実感力を持たせるというか。実感の力って凄まじいんですよ。今回演じた阿久津は、過去のある出来事があったからこそ、あそこまで迫真に迫ったリア王を演じられたんだと思うのだけど、役者ってどこか“実感探しの旅”みたいなところがあるんです。

内野聖陽 撮影/冨田望