「全て絵空事だけど、その世界にどれだけ真実を込めるかということが、僕ら役者のミッション」
演じるキャラクターと自分は似ても似つかなくて“自分と共通点なんてあるのかな?”と思うことだらけなんだけど、その中でも“僕のこういう部分と重なるな”というところを探すと、演技に少し力が出てくるんです。全て絵空事だけど、その世界にどれだけ真実を込めるかということが、僕ら役者のミッションなんです。なので、そういう違和感の中での共感探しみたいなことをしているのかもしれません」
――内野さんが演じられる役にどれも「真実味」を感じるのは、そういった役作りをされているからなんですね。
「あとはイメージですよね。“こういうキャラクターならこういうことを言いそうだな、こういうことをしちゃいそうだな”といったイメージでやる部分もあります。全て自分の中から引っ張ってくるのではなく、“こういう人物ならこういうことをしそう”っていうのを自分でイメージしながら、イマジネーションの中で動いているところはありますね」
――内野さんの中にあるイマジネーション力はどんなところからきているのでしょう。
「たとえば、昨年公開した映画『八犬伝』で言うと、曽利監督から“馬琴の書斎に風を吹かせる存在であってほしい”と言われたのが印象的でした。そのインスピレーションから演技に投影したり、違ったところからインスピレーションをいただいたり、というやり方もしているような気がします」
30年以上、役者一筋であり続ける内野さんからは、素敵な言葉が次々に出てくる。特に筆者が心を打たれたのは「役者は実感探しの旅」という言葉。虚の世界観にいかに真実味を持たせられるかは、役者さんがリアリティを取り入れることで、役や作品に命を宿すことができるのだなと感じた。次回の記事では、内野さんが演技によって自己の存在意義を確認できたエピソードについて、もう少し詳しくうかがった。
取材・文/根津香菜子
うちの・せいよう
1968年生まれ、神奈川県出身。NHKのドラマ「街角」でデビュー。2021年に紫綬褒章を受賞。近年の主な出演作に、NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」、「ブラックペアン2」(TBS系)、映画「春画先生」、「八犬伝」、「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」、舞台「芭蕉通夜舟」がある。
作品情報
『ゴールドサンセット』2月23日(日・祝)放送・配信スタート
毎週日曜22時※第1話無料放送(全6話)
出演:内野聖陽、小林聡美、中島裕翔、三浦透子、毎田暖乃/和久井映見
坂井真紀、六平直政、安藤玉恵、有薗芳記、津嘉山正種、益岡徹/風吹ジュン
原作:白尾悠「ゴールドサンセット」(小学館刊)
脚本:大森寿美男
監督:大森寿美男 清水勇気Ⓒ白尾悠/小学館 ⓒ2025 WOWOW INC.