やっぱり俺、やり投げやりたかったんだな

――そこから、俳優への挑戦も始めたんですね。

「モデルさんとは、デザインされた服をいかにジャストサイズで着るか、というマネキンのような存在。でも、『星獣戦隊ギンガマン』(テレビ朝日系)でブルーとして1年地球を守らせていただいたときに、俳優さんは、作品に合わせて“いい人”も“悪い人”もカメレオンのように演じ分けられる楽しさを知って。それが面白くて入り込んで行きました。今から考えてみると、僕の選択は正解だったと思うんです。あのままアスリートにいたら、反対に世界で金メダルを取ってるかもしれないけれど、怪我をして再起不能になって苦しんでいたかもしれないんですから」

――では、アスリートから完全に転向して想いを引きずったこともないのでしょうか?

「それがそうでもなくて。ユニクロのドライTシャツのCMを任された時のこと、27歳くらいだったでしょうか。やり投げのフォームを撮って、“楽しかったな!”ってコメントを入れるシーンがあったんです。そのセリフを言った瞬間、“もう終わったんだな”と感じて現場で泣いちゃったんです。やめて5年経ってたのに、やっぱり俺、やり投げやりたかったんだなって」

 アスリートからモデルに転向し、その後、俳優、タレントとしても成功を収めた照英さんだが、話題がやり投げに及ぶと話に熱がこもる。今注目しているのは昨年のパリオリンピック槍投げで金メダルを獲得した北口榛花選手の動向だ。

「もともと日本人の体格や瞬発力、パワーだとなかなか金メダルは目指し辛いんです。その中でも北口選手は体格にも恵まれて、2023年世界陸上も2024年のダイヤモンドリーグもパリオリンピックも優勝。世界チャンピオンも果たしてしまいました。日本人でこの成績を収めたのは前代未聞ですよね」

 陸上競技者として、あらゆる世界タイトルを手にしてきた北口選手、次に目指してもらいたいものがあるとすれば何だろうか。

「“世界記録”の一択でしょう。女性のやり投げの距離で大台なのは70mで、これを達成したのは数人しかいない。世界記録は72m23ですが、この保持者はチェコの選手です。北口選手が修行しているのは同じくチェコですから、日本の国旗を背負ってぜひ達成してほしいですね」

 今年9月には東京で世界陸上が開催される。

「今まで投擲種目は、僕の指導もしてくださった小山裕三先生が解説されています。僕もしゃべりはできますから、今回やり投げだけでも任せてくれないかな、なんて期待しています(笑)」

照英(しょうえい)
1974年埼玉県出身。元陸上競技・やり投の選手で、1996年の全日本学生選手権とひろしま国体のやり投で準優勝の経歴を持つ。自己ベストは73m90。大学卒業後、恵まれた体躯を生かしモデルとして活動。1997年に単身で渡米をするなどの経験を活かし、念願であったジョルジオ・アルマーニのコレクション出演を果たす。1998年、「スーパー戦隊シリーズ」『星獣戦隊ギンガマン』のゴウキ / ギンガブルー役で俳優デビュー。2002年から2007年まで、『水戸黄門』に風の鬼若役で出演。その後は俳優・タレント活動だけでなく、司会・デザイナーなど活動の場を広げている。2005年に結婚。2007年に第1子(長男)、2010年に第2子(長女)、2016年に第3子(次女)が誕生。令和2年9月、第40回全日本マスターズ陸上競技選手権大会の槍投げ(M45クラス)に出場し、クラス優勝した。