いくつもの初挑戦があった映画『ネムルバカ』

 11歳で俳優としてのキャリアをスタートさせた平さんだが、今回の映画では初めての挑戦がたくさんあった。

「今回のルカのような役は、自分が求めている役でもありましたし、もう全体的に前のめりな感じで全部をやりたいという感じでした」

──自分が求めている役、とは?

「今回は金髪もそうですけど、普段の自分とは全然違うクールなキャラクター、ミュージシャンの役ということで挑戦するものもたくさんありました。阪元裕吾監督の作品は以前から拝見していて、監督が描く日常の自然体な言葉の言い回しなど、そういうものをひっくるめて全部が私のやりたいことだったんです」

(c) 石黒正数・徳間書店/映画『ネムルバカ』製作委員会

 映画『ネムルバカ』は、人気漫画家・石黒正数氏の同名コミックの実写化で、大学の女子寮で同じ部屋に住む後輩・入巣柚実(久保史緒里)と先輩・鯨井ルカの二人の日常を描いた青春ストーリーだ。

「原作コミックが描かれたのは平成18年なので2006年……20年近く前なんです。かなり前に描かれているんですよね。でも、今の令和の時代でもすごく心に響く言葉がたくさんあって、二人の空気感もリアルに感じられる……時代を超えるというか普遍的というか。そんなところがとても素敵な作品だなって、最初に原作を読んだ時に感じました」

 演じた鯨井ルカはインディーズバンド「ピートモス」でギターとヴォーカルを担当している。劇中では実際にギターも演奏したがーー。

「本当にゼロからのスタートでした。楽譜のコードすらも読めなかったので、指の位置を全部覚えて、筋肉痛になりながらやりきりました (笑)。準備期間もあまり無かったんですけど、ロックバンド「the dadadadys」の儀間陽柄さんが今回、ギターを教えて下さったんです。じつは、儀間さんが劇中で“ピートモス”のメンバー、ジャガー・モリィ役を演じていらっしゃるんです。“ピートモス”は、ロックバンドなのでリズムが速くて、ギターを弾いていると弦に指先が引っかかってしまって、練習中に何度も血だらけになっちゃいました(笑)」