役に共感する部分は?

 ドラマの取材でよくある質問になるが「演じる役の共感する部分は?」という質問を投げかけると、一瞬迷って、2秒ほど「うーん」と考えてから「ないですね」と答えた山村さん。しかしそれは役を突き放したわけではなく、自身に近づけたうえでの到達した答えのようだ。

「人間関係にここまで悩んだ結果、対人関係が苦手になってしまう黒川なんですけど、ここまで愛に深いというか、そこまで自分は人に対して悩んできたかな、向き合ってきたかなと言われると、そこまで思い込むことは自分の中であまりなかったなと思うんですよね。そういう意味で共通点を見出すのは難しいかなって」

 そして、「共感」ではない他のアプローチにたどりつく。

「思い込んだ結果、ああいった不器用な生き方になっていったのが黒川で、そこに関しての共感はできないんですけど。ただ大事なのは、黒川に共感するというよりも、“理解する”、“理解しようとする”ことだと思うんです。 “なんでこうなっちゃったんだろう”、自分はこう生きることはないけど、この人はこういうふうに考えて、こうなってしまう…すみません具体的なことを言えないので、抽象的なんですけど(笑)。そういう生き方を理解しようとトライするのが大事だなと思いながら撮影に臨んでいます」

山村隆太 撮影/有坂政晴