2008年に洸平名義でメジャーデビューし、以降、舞台を中心にテレビや映画など多数の作品に出演。近年は、エッセイの執筆や番組のMCを務めるなど、多岐にわたって活躍している松下洸平さん(38)。昨年放送のドラマ「放課後カルテ」や、ミュージカル「ケイン&アベル」で主演を務め、待機作には26年の大河ドラマ「豊臣兄弟!」が控えるなど、ここ数年、主演から重要な役目といった大役を任されることが増えている。そんな松下さんにとって転機となった言葉や、自身が言葉を発するときに込めた思いなどを聞いた。【第3回/全4回】

松下洸平 撮影/有坂政晴

 昨年(2024)発売したエッセイ『フキサチーフ』や、Instagramに載せる文章、MCを務めるラジオ番組のトークでも「言葉を丁寧に扱い、伝える人」という印象がある松下洸平さん。ブレイクを機に言葉を発信する機会も増え、その一挙手一投足が注目される存在となった松下さんが、言葉を紡ぐ、誰かに伝えるうえで大切にしていることとは。

――以前、松下さんが主演を務めたミュージカル「ケイン&アベル」の大千穐楽を終えた翌日(3月3日)に、Instagramに投稿した文面の中で、「隙間なく現場に恵まれてきた」という表現が特に印象に残っています。多忙だった日々を「きつかった」や「休む間もなかった」という言葉ではなく、見る側に何も負担をかけない言葉を使われる方だなと思いました。ご自身が言葉を発する、伝える際に心がけていることはありますか?

「自分の言葉は誰か1人に向けるものではなく、特にSNSやラジオはたくさんの方に見て、聞いていただけるものであってほしいと思っています。

こういったインタビューもそうですが、僕が発した言葉は文字や映像として後々も残るものなので、“この言葉で誰かが傷つくんじゃないか”とか“この言葉を使うと誤解を招くんじゃないか”ということを一瞬考えてから話すようにしています。

 言葉って、意味合い一つをとっても100人いたら100通りあると思うんですよね。とはいえ、いろいろな人にお伺いを立てながらしゃべると自分の本当の気持ちが届かないこともあるので、時には99人を傷つけることになっても、たった1人のためになる言葉もあると思うし、それも必要な瞬間はあると思います。

 なるべくその数は少ない方がいいと思うし、難しいところではありますが、聞いてくださる人の顔を思い浮かべて、できるだけ誤解を生まないように心を配りながらも、自分自身の言葉で伝えたいなと思っています」