松下さんが思う「言葉の持つ力」

――先ほど(2回目)お話しいただいた、吉田鋼太郎さんのエピソードもそうですが、誰かに言ってもらった言葉が、その後の自分にとって、ものすごい力になっていることってありますよね。松下さんは「言葉の持つ力」を今どのように考えていますか?

「たった一言で誰かの人生を変えることもできるし、一生立ち直れない傷をつくることもできる。言葉は救いになるけど、同時に凶器のような存在でもあると思います。

 僕も言葉に救われて支えられて生きているし、言葉を扱う仕事しているので、言葉のチョイスや伝え方はとても大切だなと思います」

松下洸平 撮影/有坂政晴

――エッセイ『フキサチーフ』の最終章で「これからも言葉を探すのだ」と書かれていましたね。

「知らない言葉を追求することは意外と楽しいです。今でも台本を読んでいると知らない言葉がたくさん出てくるし、音楽を聴いていて、知らなかった言葉を使って愛を伝えている歌と出会うと楽しくて“言葉って面白いな”と思います。

 ライターさんなど、言葉を扱い、それを武器にしてお仕事をされている方はたくさんいらっしゃるので、とても奥が深くて尊いものだなと思います」

 目は口ほどに物を言うというが、使う言葉のチョイスや伝え方にも、その人の人柄や本心が表れると思う。人と話す、誰かと会話することを大切にしていると話す松下さんから発せられる言葉の端々には、相手を慮る気持ちが込められている。そんな松下さんの言葉を待っている人たちが、この空の下にはたくさんいる。

 

取材・文/根津香菜子

まつした・こうへい
1987年3月6日、東京都生まれ。2008年に、洸平名義でシンガーソングライターとしてデビュー。翌年より俳優活動を始め、NHK連続テレビ小説「スカーレット」でヒロインの夫、八郎役を務め人気を博す。近年の主な出演作にドラマ「最愛」、「放課後カルテ」、大河ドラマ「光る君へ」、映画「ミステリと言う勿れ」、舞台「母と暮せば」、ミュージカル「ケイン&アベル」などがあるほか、26年放送のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」では徳川家康を演じる。

『松下洸平 じゅうにんといろPart.1/Part.2』(朝日新聞出版)
定価:1,870円(税込)
発売日:2025年3月17日(月)
サイズ:A5判並製 /240ページ