確かな演技力で、ドラマ、映画、舞台とフィールドを越えて活躍中の岸井ゆきの。4月スタートのドラマ『恋は闇』(日本テレビ系)では志尊淳とW主演を務める。この2年の間で映画やドラマで演じたキャラは、元天才科学者、終末期病棟の看護師、皇女、老舗玩具メーカー社長、元ヤンのタクシードライバー、聴覚障害を持つプロボクサー……と実に多彩である。これだけの役をこなせるのは俳優として15年のキャリアが生み出した結果なのであろう。そんな岸井ゆきのにとっての”THE CHANGE”とは──。【第2回/全2回】

岸井ゆきの 撮影/冨田望

 映画『ケイコ 目を澄まして』に出演し、第46回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を含む、6つもの賞を受賞した岸井さんだが、自身にとってこのことが大きな「CHANGE」となったのだろうか。

「『ケイコ』はプロボクサーの役でしたので、肉体を作らなければいけなかったですし、手話もあったので、この映画を撮影していた3か月間は他の仕事をせずにセーブして、『ケイコ』だけに集中しました。一つの作品だけに打ち込むって、実際にはなかなかできることじゃないんですけど、三宅唱監督の組で映画の制作現場を経験したことで、こういう風に良い環境で映画作りが出来るってことにすごく勇気をもらえたんです。環境作りという、いわば基礎作りからの大事さを感じました。これからも、そういう映画作りをやっていこうという励みになりました」

 岸井さんの映画作りへのパッションは『若き見知らぬ者たち』に引き継がれていく。母の介護をし、亡き父の借金返済に追われながらも、叶わなかった自分の人生を自身の弟に託し生きてきた青年・彩人(磯村勇斗)の生き様を描いた物語で、岸井さんは彩人の恋人・日向を演じた。

「いただいた台本を読ませてもらったとき、読み物としてすごく面白いと思ったんです。先々の展開も絵が見えるところがあって、映画になったときの立ち上がる感覚がありました。最後に向かって物語が疾走していく感じは、もう文字から見て取れましたね。ここにこう着地していくんだ……って感覚があって、ぜひ参加したいと思いました」