『ローレライ』(05年)、『日本沈没』(06年)、『シン・ウルトラマン』(22年)などを手がけ、『シン・ゴジラ』で日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した映画監督、特撮監督の樋口真嗣。ネットフリックスで配信される『新幹線大爆破』のリブート版を監督する彼のTHE CHANGEとはーー。【第1回/全2回】

ネットフリックスで配信される『新幹線大爆破』のリブート版を監督しました。もともと、佐藤純彌監督による原作の『新幹線大爆破』(1975年)は大好きな作品です。なにしろ、子供の頃、公開初日に観に行ったほどですから。
僕は母方で初めての孫、父方で初めての男の子だったので、ものすごく甘やかされて育てられました。幼稚園の頃はたくさんのおもちゃを買い与えられ、怪獣のソフビ人形も大量に持っていました。怪獣ブームがずっと続いていた時代で、その影響を強く受けていたんですね。ところが、小学校に入学するタイミングで、親に「もう卒業しなさい」とおもちゃを全部捨てられてしまったんです。心に大きな穴が開いたようでしたね。
以後、唯一の娯楽として許されていたのが図鑑でした。だから僕はそこから怪獣に近いものを探し、魚の図鑑で深海魚にたどり着きました。あのグロテスクな姿がものすごくカッコよく感じられたんです。
次にハマったのが城です。怪獣が出ないテレビ版の『日本沈没』(TBS系)は見ることが許されて、姫路城が崩壊するシーンに心を奪われました。五重塔や天守閣といった巨建築は、まるで怪獣のように圧倒的な存在感がありますから。当時、祖母の家の近くにあった「交通博物館」にもよく行っていて、鉄道も好きでしたね。怪獣や特撮が制限される中で、そうやって、自分の好きなもの、怪獣に代わるものを見つけていました。
『新幹線大爆破』との出合いは小学4年のときです。新幹線が爆発しているポスターを見た瞬間、どうしても観たくなったんです。そこにも怪獣的なものを感じたんですね。でも、うちの親は連れて行ってくれそうにない。そこで僕は学校をサボって観に行きました。