15歳の小林幸子に、容赦なく重くのしかかった苦労や挫折

 デビュー直後はちやほやしてくれたまわりの大人たちの態度が、売れなくなるとガラッと変わった。

「でもね、なにしろ子どもだからよくわからなくて、“みんな、どうしちゃったの?”と途方に暮れる感じでしたね。デビューしてすぐに新潟で大きな地震が起きて、その影響もあり実家の精肉店を続けていくことがどんどん難しくなり、両親と2人の姉も東京に移ってきたんです」

小林幸子 撮影/有坂政晴

 仕事を失った両親と、まだ学生だった姉たち、わずか15歳の幸子の家族に大変な生活が始まる。

「オファーされたお仕事は全部受けましたね。歌う仕事をしたいというより、とにかく生活費を稼がなくちゃいけないという一心でした。レコードも何枚か出したけど、まったく売れなくて……。
 そのころは、辺見マリさんや奥村チヨさん、ちあきなおみさんなど、セクシーな歌手が人気でしたけど、15歳のわたしがセクシーな衣装を着て歌っても、全然ダメなんですよ。20歳くらいになってやっとそういう歌が歌えるようになったと思ったら、山口百恵ちゃんたちが13歳くらいでデビュー。ああ、歌の神様は、わたしを見放したんだなと思いました」

 そして、25歳を迎えるころ、運命の1曲と巡り会うことになる……。

(つづく)

小林幸子(こばやし さちこ)
1953年12月5日生まれ。新潟県出身。1964年、10歳で『ウソツキ鴎』でデビューし、天才少女歌手として注目される。『おもいで酒』『雪椿』『もしかして』などヒット曲多数。34回出場した『NHK紅白歌合戦』では、豪華な衣装が視聴者にとって大晦日の楽しみとなった。新潟県新潟市のNSG美術館にて『小林幸子 ふるさと凱旋衣装展〜ラスボスのキセキ〜』が2025年8月24日まで開催中。6月27日(金)から公開される劇場用アニメ『小林さんちのメイドラゴン さみしがりやの竜』のエンディング主題歌『僕たちの日々』を担当。

芸能生活60周年記念 小林幸子 ふるさと凱旋衣裳展 〜ラスボスのキセキ〜

【開催概要】 
日時:2025年3月20日(木)〜8月24日(日) 
会場:NSG美術館(新潟市) 
入場料:一般 700円(高校生以上) 
中学生以下 無料 
開館時間:10:00〜17:30(最終入館 17:00) 
公式サイト:https://www.nsg-artmuseum.jp/