1983年に放送されたドラマ『青が散る』(TBS系)で俳優デビューを果たしてから40年余りのキャリアを持つ石黒賢。90年代には誰もが夢中になったトレンディドラマ『振り返れば奴がいる』(93年・フジテレビ)で情熱派の外科医・石川玄を演じ、俳優としてのスタンスを確立させた。デビューから今日に至るまで実に様々な役をこなし、数々のドラマ、映画等に出演。来年還暦を迎えるが、現役として第一線で活躍し続ける石黒さんにとってのTHE CHANGEとは──。【第2回/全4回】

「“俳優になりたい!”という連中が集まっている芸能界において、僕は異質な存在だった思います」
高校3年生の時にドラマ『青が散る』で華々しくデビューした石黒さんだったが、デビュー当初はそう思っていた。というのも、このドラマに出るきっかけとなったのは、日本人初のプロテニス選手として有名な父・石黒修氏の存在だった。
「ある時、“新しく始まるドラマの主人公が、テニスが出来る青年という設定なんだけど、石黒さん誰か知りませんかね”と父に相談されたらしく、それで父から“お前やってみないか?”と言われたんです」
『青が散る』は、宮本輝が書いた同名小説のドラマ化で1983年から84年にかけてTBS系列で放送された。新設大学のテニス部に入部した青年・燎平の成長を描いた青春群像劇。そこで石黒さんは燎平を演じた。
「撮影は高3の9月からだったと思うんです。撮影期間はワンクールでしたから、終わったのは12月の中旬ぐらいでした。だから2学期はほとんど学校に行けなかったんです。行けても週に1日ぐらいだったかな」
苦笑を交えながらそう述懐する石黒さんだが、それまで演技の経験といったら、学芸会での芝居でも端役ぐらいで皆無に等しかった。だから現場に行くと監督からは色々と言われる。その一方でプライベートでは学業の低下。寝不足の日々が続くが、もう俳優を辞めたいという気持ちにはならなかったという。
「監督から“下手だ”と言われてもわりと平気でした。というのも、そもそも演技の経験が全くなかったので、“下手で当たり前”ぐらいに思っていたんです。芝居をすることが面白いとか、俳優の醍醐味である台本や役作りの妙味が面白いとか、そういうことを当時感じるレベルですらありませんでした」