「ニュース報道は、歴史の最前線にいるんだぞ」

 私も、「仕事ばかりしていたら結婚できない」と思って、それを機にフジを辞めました。夢のような新婚生活が送れるかなと思ったけれど、辞めてもなお、仕事はドンドン追いかけてきましたね (笑) 。

 仕事上での転機ですか?

 フリーになって5年後に、夫がニューヨークに転勤になったタイミングで、私も日本の仕事を辞めて一緒について行ったんです。

 というのも、私の入局した85年の夏に、御巣鷹山の日航機墜落事故がありました。現場で生存者を最初に発見したのがフジで、ニュース番組を担当していた露木茂さんは、それまでの原稿を全部ボツにして、直前の現場画像をバックに「生存者がいる模様です、生存者が〜〜」と報道したんです。私はその横にいて、ハラハラ、ドキドキするだけでしたが、後で露木さんに、「ニュース報道は、歴史の最前線にいるんだぞ」と諭されました。「これこそが、ニュースなんだ」って。

 そのことがずっと頭にあったので、もう一度、ニューヨークの大学院でジャーナリズムをちゃんと勉強することにしたんです。

 向こうで予備校に通い、ニューヨーク大学院の入試を受けて合格して「メディア環境学」を専攻しました。

 論文はもちろん英語なんですが、文法が間違っていると落第なんですよ。だから、アメリカ人の同級生は昼間に仕事してから夕方からの授業に出席していましたが、私たち外国人の学生は、昼間はずっと薄暗い図書館にこもって授業の準備をしていました。

(つづく)

長野智子(ながの ともこ)
1962年12月24日、米国・ニュージャージー州生まれ。上智大学外国語学部を卒業し、85年にフジテレビ入局。90年、結婚を機にフリーに。95年に渡米しニューヨーク大学大学院入学。卒業後はジャーナリズムの世界で活動している。現在は、文化放送『長野智子アップデート』(月15時30分~17時、火~金15時30分~17時35分)に出演中。