70年代に清純派として人気を集め、多くのドラマ、映画で活躍した俳優・仁科亜季子さん。芸能一家で育った仁科さんだったが、これまでの人生は実に波乱万丈ともいえる。特に90年代以降は4回もの大病に見舞われたにもかかわらず、その都度試練を乗り越えてきた。そんな体験を経て、なお現在も現役で活躍し続ける仁科さんのCHANGEとは──。【第1回/全4回】

この日の取材が行われたのは都内某所にあるレトロなマンションの最上階。少し風が強いが陽射しがまぶしい春らしい天気だった。実際にお会いした時のファーストインプレッションは、とても70代とは見えない瑞々しさ、白の衣装がお似合いで、とにかくお若い。
そんな仁科さんの最新出演映画は、いまおかしんじ監督の『真夏の果実』である。本作は、ぶどう農家を営む夫婦の妻の浮気をきっかけに離婚危機に陥った夫婦の心情を描いたラブストーリー。夫の龍馬を奥野瑛太、妻のあゆみをあべみほが演じ、仁科さんが演じたのは龍馬の母・遥子だ。
東京に出稼ぎに出た龍馬は幼なじみの千尋と東京で再会し、浮き足立つ。その間、あゆみは、夫の母・遥子と二人暮らしを送るが、たまたま出会った年下の営業マン・草壁と急接近し、やがて一線を越えてしまうーー。
「最初にあらすじを聞いた時は、あゆみの心情が変わっていく部分で私だったらどちらの味方をするんだろう、息子にはなんて言うんだろうと考えました。私にも龍馬と同じくらいの歳の息子がいるので、母親の心情的な部分はかなり複雑だろうなと思いましたね。でも、生活の基盤が3人という中で成り立っているわけで、息子にも落ち度があると思うし、最後はうまくいってくれれば……って思ってるだろうなと思いました」