1988年より小劇場を中心に俳優活動をスタートし、唯一無二の個性派俳優として幅広く活躍する温水洋一さん。彼が小劇場で芝居をはじめ、初めて映画に出演するまでに至る「THE CHANGE」とは?【第1回/全2回】

中学の頃までは引っ込み思案で、人前に出るのが苦手でした。それが高校時代には当時始まったばかりの『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)の影響もあって、人前で学校の先生のモノマネをしたり、友人とコントをやったりするようになりました。でも自分から積極的にやるのではなく、「俺はいいよ、出たくないから」とか言いながら、家でしっかり練習してる。そんな高校生でした。
もともと芝居で人をだますのは好きでしたね。たとえば宿題を忘れ、先生に「すぐ家に帰って持ってこい」と言われたときのこと。ホントは宿題のプリントはカバンの中に入っていて、ただやってないだけでした。大慌てで図書館に行って、宿題を済ませて戻るんですが、このとき、顔を水道の水で濡らして汗かいたように見せ、息が切れた演技までして。友達に「よくだませたな」なんて言われるのが嬉しかったですね。
そんな僕に演劇部を勧めてくれたのは、当時憧れていた美術部の女の子。美術部と演劇部の部室は隣同士だったので、「もしかしたら……」なんて気持ちも少しありました。
その演劇部で演技の面白さに目覚めちゃった感じです。市民会館で行われた文化祭の舞台にも立ちました。演目は『夜叉ヶ池』。僕は大事なシーンでコケて、着物が破れてしまったんですが、これが大ウケ。そのときの快感は忘れられないですね。
大学でも演劇をやりたかったんですが、最初の受験は不合格。それで東京に出て、予備校に通いました。でも勉強より、好きな演劇を見ることに一生懸命でした。当時はやりの小劇団の芝居を観まくりました。
もちろん、バイトもしました。親戚が新宿の河田町で中華料理屋をやっていて、その店がお台場移転前のフジテレビ前にあったんです。今日のインタビュー場所の近くですね。なので、よくフジテレビにも出前で行きました。おかげで『夜のヒットスタジオ』『オレたちひょうきん族』などに出ている芸能人を間近に見られました。