大人計画はシュールで、ブラックで、衝撃的でした
結局、二浪しても希望の大学には入れず、愛知の大学に入り、ここでも演劇部に所属しました。ただ、大学時代も名古屋から深夜バスで東京に行き、友達のアパートに泊まっては芝居を観ていました。焦り始めたのは大学4年の就職活動が始まった時期。将来どういう道に進もうかと思い、劇団の研究生になることも考えました。でも、東京乾電池や夢の遊眠社のような人気のある劇団に入るのは難しいので、これから旗揚げするような小さな劇団はないかな、なんて思っていたんです。
そんな時期にまた東京に行き、芝居を観ました。6月だったと思います。当時は昼と夜1本ずつ芝居を観るのが習慣で、その日も1本目を観たあと、友人と居酒屋で「次、何にしようか」と話していました。それで情報誌の『ぴあ』を見てたら、欄外の1行広告に大人計画という劇団が夜10時からレイトショーを行うことが書かれていたんです。友人と一緒に行ったんですが、これがとにかく面白い。シュールで、ブラックで、衝撃的でした。
しかも僕らが観たのは旗揚げ公演前のプレ公演で、チラシには「劇団員募集中」と書かれていました。それで応募したわけです。といっても、すぐに応募したわけではなく、名古屋に一度帰り、8月に上京しました。忘れもしません。大人計画の事務所がある下北沢駅西口の白洋舎の前の公衆電話から連絡を入れました。「すぐに来てほしい」と言われても、対応できると思ったからです。
(つづく)
温水洋一(ぬくみずよういち)
1964年6月19日生まれ。宮崎県都城市出身。88年より小劇場を中心に俳優活動をスタート。唯一無二の個性派俳優として幅広く活躍。2017年に舞台『管理人』で第52回紀伊國屋演劇賞・個人賞受賞。現在、舞台ケムリ研究室no.4『ベイジルタウンの女神』(25年5月6日~6月15日公演)に出演中。近年の主な出演作は、ドラマ『リラの花咲くけものみち』(25年)、映画『ウラギリ』(22年)。待機作に、Bunkamura PRODUCTION 2025『アリババ』『愛の乞食』(25年8月~10月公演)などがある。
『ゴッドマザー~コシノアヤコの生涯~』
日本のファッション界に革命をおこしたコシノアヤコの生涯が映画化される。コシノアヤコ
役は、元宝塚歌劇団トップスターの大地真央が初主演。娘たち“コシノ3姉妹”は、黒谷友香 鈴木砂羽 水上京香が熱演し、天使役の温水ほか、木村祐一 市川右團次などが脇を固める。監督・撮影・編集は『カメラを止めるな!』の曽根剛が務める。
5月23日より全国公開