電車に乗ったら、見知らぬ人に罵声を浴びせられたこともありました

ーーアメリカ帰りの英語教師・大岩雄二郎(中村雅俊)が活躍する、学園ドラマですね。

「ドラマの学園生活が、リアルな生活よりも楽しく見えたんです。“こんな世界があるんだ”って。たくさんの俳優さんが出ていましたが、中でも藤谷美和子さんが演じた藤村春子という女子生徒がとてもかわいらしくいきいきとしていて、それが俳優という仕事に興味を持つきっかけでした」

ーーそれで15歳のときに、『アイコ十六歳』のオーディションを受けて合格し、デビューを果たして、今日に至るまで、たくさんの作品に出演されていると。

「20歳ぐらいで、ドラマ『オイシーのが好き!』(89年TBS系)で初めて主演を務めさせてもらって、直後に『想い出にかわるまで』(90年・TBS系)に出演したんです」

ーー『想い出にかわるまで』はヒロインである姉の沢村るり子(今井美樹)の婚約相手を奪ってしまうという、とんでもない役でした。

「いわゆる嫌われ役。電車に乗ったら、見知らぬ人に罵声を浴びせられたこともありました。今みたいにSNSとかはない時代でしたが、ドラマは、すごく影響力があるんだなと感じました」

ーー電車の中で罵声!!

「さんざんでした(苦笑)。役柄が演者のイメージに、そのまんま影響するんだなってことを体感しました。ただ、同時に皆さん、本当に楽しんでドラマを見てくださっていたんだなと思いました。ある意味、感謝しています」

ーー心が折れてしまいそうな経験です。どのように乗り越えたんでしょうか?

「芝居をしていると、その役で視聴者の方に見てもらえるということは、それだけドラマを楽しんでもらえているんだって、思うようにしていました。だから電車内で罵声を浴びても、これは褒め言葉なんだって、自分に言い聞かせていました。正直、嫌われるのはつらかったですけど」

(つづく)

松下由樹(まつしたゆき)
1968年7月9日、愛知県生まれ。O型。T168。1983年に映画『アイコ十六歳』でデビュー。92年には第15回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。『ディアマイベイビー~私があなたを支配するまで~』は毎週金曜深夜24時12分~放送中。