「人に対しても自分の心にも、やっぱりウソをつかない」
ただ、出来上がったものはロマンティックであり、シネマティック。「爪を切る」というところに独特な思いがこもる。
「別れる女って孤独でしょ。もう、絶対二度と会わないからね、と思いながら爪を切っているわけ。でも未練はあるのよ。だから切ってるのよね。そんな瞬間が歌詞になった曲。でも、もともとは実は怪獣なの(笑)」
『恋におちて』や『六本木心中』など今も世代を超えて愛される楽曲を残す湯川さん。その理由はなんだと思われますか?と尋ねると、「それはわからないわよ(笑)。でも本当にありがたいですよね」と笑顔で答えてくださった。
自らを「元祖推し活」と言い、好きなものへのまっすぐな思いを70年余りにわたって届けてきた湯川さんが、若い世代に伝えたい思いとは。
「たぶん私、いろんな意味でウソをついてこなかったんでしょうね。ウソをつくと、どんな小っちゃなウソでも“天網恢々疎にして漏らさず”で“それ、ウソだー!” ってどこかに出てくるんですよね。人に対しても自分の心にも、やっぱりウソをつかないというのが大事なのかも」
インタビューは予定を超えて長時間じっくりお話しを聞くことができ、「好き」に対する嘘のない姿勢を貫く湯川さんの言葉、ひとつひとつに力をいただく時間となった。

ゆかわ・れいこ
1936年1月22日生。東京出身。読者としての投稿がきっかけで1960年にジャズを専門とした音楽雑誌『スイングジャーナル』で執筆を開始する。以降、音楽評論家、作詞家、ラジオDJとして幅広く活動。エルヴィス・プレスリーやマイケル・ジャクソンといったアーティストに関する原稿を数多く担当したほか、ディズニーのアニメ版『美女と野獣』『アラジン』などの日本語詞を手がけた。
湯川れい子『私に起きた奇跡』(ビジネス社)
定価:1,760円(税込)