日本初のラジオの女性DJであり、数々のヒット曲を生んだ作詞家。日本作詩家協会元会長、現顧問の音楽評論家。日本のエンタメ界を昭和・平成・令和と先導する湯川れい子さんが新著『私に起きた奇跡』を刊行した。この中で「私の仕事は、『元祖・推し活です』」と自ら評するように、エルヴィス・プレスリーをはじめ、歴史的なスーパースターを「推し」続けてきた70年余り。バイタリティ溢れる湯川さんの「推し活」ヒストリーはもちろん、昭和を彩った名曲のエピソードなどもたっぷりと語ってくれた。【第5回/全5回】

湯川れい子 撮影/有坂政晴

“金妻”という言葉を生み、ヒットシリーズとなったTBSドラマ『金曜日の妻たちへ』の第3弾『金曜日の妻たちへⅢ・恋におちて』の主題歌となったのが小林明子さんの『恋におちて-Fall in love-』。この歌詞も湯川さん。ドラマのストーリーに合わせて歌詞の発注も「不倫」だった。

「『恋におちて』は8回ぐらい書き直しました。最初はね、カレン・カーペンターみたいな、ロマンティックで温かい感じの歌詞を書いたの。そうしたら途中から、“いや、これは実は不倫ドラマなので、不倫にしてください”って言われて、“え? 不倫!?”って。息子はまだ6歳ぐらいで、そのへんでドタバタ遊んでるときに、“不倫かぁ”、と。(笑)あれは苦しみましたね」

「ダイヤル」はこの曲の印象的なキーワードだ。

「実はあの“ダイヤル”は変えろって言われたの。ちょうどプッシュホンが普及し始めて、都内の公衆電話は全部プッシュホンに切り替わる、みたいなタイミングだったので、ここを変えてください、と。でも、ここを変えたらこの曲は死にますよ、と。そのままの形で出すことになって。あの歌詞がなかったら生き残れなかったと思います」