幼い子供ほど理屈には興味がない

 日本の指導は、理屈と理論から入ることが多いよね。でも、これでは子供は飽きちゃう。なぜ理屈や理論が先行するかといえば、それは体育という教育の一環として、指導するという考えが根本にあるからじゃないかと思う。ただ、子供に教えるうえで、理屈じゃなくて、僕がやったサッカー教室のように、目から入るってすごく大事なことだと思う。

 そもそも、幼い子供ほど理屈には興味がないよね。子供は理屈だけじゃなくて“絵”も伝えないとインプットはできないよ。とにかく、僕は子供と一緒にサッカーで遊んで、インサイドキック、インステップキック、トーキック……いろんな技術を実際に見せたんだ。

 その後、Jリーガーになる選手も、たくさんサッカー教室に参加してくれていて、「セルジオさん、めちゃくちゃうまかったですよね」って今でも言ってくれる。とても誇らしい活動ではあったんだけど、思わぬことが今になって起きているんだ。

 僕が「キミなら絶対にプロのサッカー選手になれるよ」と話しかけたサッカー少年たちが、本当にプロのサッカー選手になって、引退後は監督も経験する。これは僕にとっても、とても嬉しいことなんだけど、気づいたら、彼らが今度は解説者になっていて、僕の仕事を奪いにやってきている (笑) 。

 あの頃のサッカー少年たちが、まさか今になって、僕の仕事のライバルになるとまでは、想像できていなかったね。

セルジオ越後(せるじお・えちご)
1945年7月28日生まれ。ブラジルサンパウロ出身。17歳のときにサンパウロの名門・コリンチャンスのジュニオール(ユース)に合格。72年には、日本サッカーリーグの藤和不動産サッカー部に入り、74年までプレー。引退後は、日本サッカー協会公認の『さわやかサッカー教室』を開き、サッカーの普及に尽力した。現在はサッカー解説者として活躍中。