「来週、オーディションがあるから家に来て」

――マネージャーさんがきっかけだったんですね。

「大学の近辺に雀荘はいっぱいあったし、先輩もみんなやるからすぐ覚えました。そしたら“来週、オーディションがあるから家に来て”と言われて行ったんです。監督らしき人と、プロデューサーらしき人と、そのマネージャーがいて、私を入れて4人で卓を囲むことになって。“どういうオーディションなんだろう”と思いながら、当時の私はへたくそだからボロ負けするわけですよ。まあ、ご馳走してもらえるからいいんだけど、でも“負けた”と思いながら帰ってくるわけです。

 そのうちまた“来週、日曜空いてる? オーディションなんだけど”と言われて行くと、違う監督とかがいて、また麻雀をする。それでまたボロ負けするんです。“これがオーディション?”と思うんですけど、そのうち小さな単発の仕事をいただいたりしてました。まあ、顔を広げることにはなったかもしれないんですけどね。次第に“こんなオーディション嫌です”と伝えたら、“麻雀というのは、その人のキャラクターがすごく出るの。普通のオーディションでおすまししていても、室井ちゃんの面白いところが出ないから”って」

――ではその頃には、もう部屋の隅で膝を抱えている室井さんではなかったんですね。

「いえいえ、まだ鬱々としていた頃の話です(笑)」

 しかし“室井ちゃんの面白いところが”と当時のマネージャーさんが言う通り、気づかぬうちに、当時からレイ子さんに通じる空気が出ていたのだろう。

室井滋 撮影/三浦龍司

●作品情報
『ぶぶ漬けどうどす』
監督:冨永昌敬
企画・脚本:アサダアツシ
出演:深川麻衣、小野寺ずる、片岡礼子、大友律、若葉竜也、松尾貴史、豊原功補、室井滋
配給:東京テアトル