失敗に終わった冷凍食品
味ぽん以外にもさまざまなヒット商品を生み出していますが、失敗した商品はあるのでしょうか?
「過去に失敗した例でいうと、タイムディッシュという商品がそうです。当時、父(八代目の中埜和英さん)が、アメリカで普及していたワンプレート型の冷凍食品、TVディナーをすごくやりたがっていたんです。これからは即食簡便の方向になると見たんですが、当時は1997年。今でこそ冷凍食品の市場は伸びていてワンプレート型の商品も数多く品揃えされていますが、当時はまだ早かったんです。
それとワンプレートにスープにホットケーキにハンバーグ、固形物に液体物、さらに粒子の違うものを同時に凍らせるやり方だったので、解凍時に加熱ムラがどうしても出てしまうんです。今は冷凍技術もいろいろと進化していますが、当時は技術的にも苦戦していて、味もそこまでよくなかったんです。先を読むのはよかったんですけど、2年足らずで撤退しました」
2年で撤退とは素早い判断だと思います。
「酢だけにとどまらず、ビールの醸造をしたり、おむすび山などの食品も手掛けてきました。新しい市場を常に考えるというのは、昔も今もすごく意識してきた会社だと思います。それと同時に新しいことをするには、今までのものを捨てるということも大切です。新しいことをやるのは楽しい部分がありますが、広げすぎずにちゃんと整理して取り組むということが、とても重要なのだと考えています」
多彩な商品群を持つミツカン。それと同時にヒット商品を数多く持つ秘訣は、昔から続く意識にありそうだ。
(つづく)
中埜裕子(なかのゆうこ)
1976年愛知県生まれ。(株)Mizkan Holdings代表取締役社長。江戸時代から続く「ミツカン」の創業家に生まれ、成蹊大学法学部を卒業後、99年に(株)ミツカングループ本社(当時)に入社。16年に(株)Mizkan Holdings専務取締役となり、21年に創業以来初となる女性経営者となり、注目を集める。
ミツカングローバルサイト:https://www.mizkanholdings.com/ja/