1991年にビデオ作品で監督デビューし、今まで100本以上の映画を撮ってきた映画監督・三池崇史。今回最新作『でっちあげ 〜殺人教師と呼ばれた男』で初めてノンフィクション作品に挑む彼の「THE CHANGE」とはーー。【第1回/全2回】

三池崇史 撮影/河村正和

 仕事を来た順番に受けるので、今まで100本以上の映画を撮ってきました。作品数が多いからか、僕に対するイメージは、人によって違うみたいです。海外では、『オーディション』(1999年)や『殺し屋1』(2001年)の影響が強く、今でもバイオレンスやホラーの監督で通っています。だから、仕事のオファーもホラーばかり。そうじゃないものもたくさん撮っているのに、ですよ。漫画原作は『ヤッターマン』(09年)とか、最近は『新・暴れん坊将軍』(テレビ朝日系、25年1月4日放送)も撮りました。まあ、『暴れん坊将軍』はある意味ホラーでバイオレンスかもわからないですけど。

 こんなふうに、これまでいろいろな映画を撮っていますが、実は原作本がノンフィクションというのは、最新作『でっちあげ 〜殺人教師と呼ばれた男』が初めてです。今までなかったのは、三池にノンフィクションを頼んで変なことをされたらどうしよう、と思う人がたくさんいるからでしょうね (笑) 。

 ノンフィクションが原作となると登場人物の中には今もご存命の方がいるだろうし、「これって自分のことを描いている?」と、劇場に観にいらっしゃるかもわからない。そのときに、堂々と言い訳もせずにいられる作品にしないとな、と意識します。これがフィクションとの違いです。余計な演出は要らないんですよね。今作でも法廷のシーンがあるんですけど、効果音は使いませんでした。法廷という言葉を聞くための場所で、登場人物は何を言うのか?観客が耳を傾けざるをえない状況を作りたかったからです。

 映画の中で真実を追求するわけではないので責任とまでは言いません。しかし、観た方にリアルを感じさせたかったので荷は重かったですね。