1991年にビデオ作品で監督デビューし、今まで100本以上の映画を撮ってきた映画監督・三池崇史。今回最新作『でっちあげ 〜殺人教師と呼ばれた男』で初めてノンフィクション作品に挑む彼の「THE CHANGE」とはーー。【第2回/全2回】

三池崇史 撮影/河村正和

 キャリアの中で、武器になったのはヤクザモノ。ヤクザモノは安定したお客さんがいる。それを逆手に取り、「じゃあ登場人物にヤクザがいれば、それはヤクザモノだよね」と考えました。

 ヤクザの中にはおばけが怖い人もいるかもしれないからと、ヤクザしか登場しないホラー映画だって作りました。『極道恐怖大劇場 牛頭GOZU』(03年)というVシネマです。誰がこんなのにお金を出すの? という映画ですが、その意味のわからなさが新鮮だったのか、第56回カンヌ国際映画祭にも出品されました。

 この映画で翔さんには、特殊メイクをしてもらい謎の女の股間から生まれ変わって出てくるというシーンを演じてもらいました。「え? 俺、ここから出てくるの?」と驚きつつ、僕が「ヤクザモノだったらOKだと言いましたよね?」と言うと、翔さんは乗ってくれました。

 翔さんは、業界に対してなんとなく窮屈さを感じていた、僕らの楽しい武器だったんです。

 当時は「映画は映画会社の人間が作るもの」という暗黙の了解がありました。だから僕ら世代が映画監督になるには、業界の人間に引き上げてもらう必要があったんです。

 ただ僕は少し違って、現場の助監督とテレビドラマを中心にやっていて、そこからオリジナルビデオで監督になりました。

 背景には、「俺は本当は映画を作りたかったんだよ」という、お金持ちの社長の存在がありました。社長は余ったお金で夢をかなえるべく、まずは名のある監督に依頼するけど、スケジュールが合わずにOKがもらえない。そんなときに僕みたいなのが「キミ、監督もできるんじゃない?」と声をかけてもらえました。てきとうな経緯で映画監督になった僕に対して業界からは、「あいつが監督を!? ありえない」「映画人の流儀から外れている」という声も聞こえてきましたが、社長にとっては業界のルールもへったくれもないですからね。